ソフトバンクが27日の西武戦(ベルーナ)に4―1で逆転勝ちし、2年連続21度目のパ・リーグ制覇を成し遂げた。一時は借金7を抱えて最下位に沈んだ王者が、貯金33まで積み上げる圧巻の逆襲劇で連覇を達成した。
相次ぐ主力の負傷や不振で序盤は危機的低迷となったが、出場機会を得た選手たちが機能して戦力ダウンを最小限にとどめた。小久保裕紀監督(53)が「想定外」を言い訳にせず「今いるメンバーが最強」とタクトを振るった苦闘のシーズン。最終盤まで優勝を争った日本ハム・新庄剛志監督(53)の存在も、小久保監督の信念ある采配を後押しした。
選手たちの手によって胴上げされた指揮官は、7度宙を舞った。「本当に苦しいシーズンだったんで、今年1年にたずさわった選手や関係者全員の力がなければ、今日の2連覇は達成できなかった。そう思います。優勝決まった瞬間は我を忘れて喜びすぎました」。ライバル・日本ハムとの激しい優勝争いに終止符を打ち、素直に喜びを爆発させた。孫正義球団オーナーも5度胴上げされ、感無量の表情だった。
昨季はシーズンを通して一度も借金生活がなく91勝を挙げ、最終的に2位に13・5ゲーム差をつけての圧勝Vだった。だが、今季は陣容に大きな変化があった。長きに渡って正捕手だった甲斐が昨オフ、巨人にFA移籍。ぽっかりと空いた扇の要が安定するまでに時間を要すことが想定された。開幕前には先発ローテーション入りが早々に内定していたスチュワートが離脱。正三塁手の栗原もオープン戦の故障で開幕に間に合わなかった。
シーズンが幕を開けてからも、わずか3試合で腰の手術に踏み切った近藤を皮切りに柳田、正木と故障による長期離脱者が相次いだ。本拠地で開幕3連敗スタートのチームは、4月終了時点で最下位。王者にとって、まさかの低空飛行だった。5月に入っても周東、今宮が故障に見舞われ、6月には守護神オスナが不振による配置転換。その後、右肩の不調により長期離脱となった。
シーズン序盤に思い描いた「理想の型」を完全に失った布陣。指揮官は「主力がこれだけケガをするというのは想定外だった」と素直に受け止めた上で「今いるメンバーが最強」と自らに言い聞かせ、現実路線に舵を切った。5月2日のロッテ戦では9回二死から追い上げ、川瀬の殊勲打で逆転サヨナラ勝ちを収めて連敗を5で止めた。この「分岐点」となった試合に限らず、現実路線に立った日々の割り切りの早さが功を奏し、指揮官の〝スピード感のある決断〟の連続が戦局を安定に導いた。
シーズン前に「代打専任」を直接通達した中村の起用法を、開幕直後に方針転換。不振に苦しんだ大砲・山川については5月に「不動の4番」を解除して「思いつきではなく、ずっと考えてタイミングを図った」上でファームに降格させた。主力がごっそり抜ける中、6年ぶりに交流戦を制覇。場数を踏み、白星を積み重ねたことで正捕手候補の海野が着実に成長を遂げ、主力不在で出番をつかんだ柳町、野村は自信と年間通して戦う力をつけた。オスナに代わる守護神には実力で杉山が台頭。背に腹は代えられない状況で埋もれていた才能が開花し、要所で指揮官の英断がさえた。
ハイレベルな優勝争いが野球ファンの心を熱くする。セ・リーグは阪神が記録的な強さで覇権を奪取。それだけに日本ハムとのし烈なペナント争いがおのずとクローズアップされた。「愉快と書く方の『愉(たの)しむ』。プレーできる喜びを感じて、愉しむ」。指揮官が開幕前から一貫して選手に求めてきたものだ。くしくも「愉しむ精神」は、新庄監督とも同じ考え。プロ野球という真剣勝負の中でしか味わえない苦しみもある。その環境に身を置ける幸せをかみ締め、選手として洗練される喜びを説いた。
プロ野球はエンターテインメント。常に野球ファンの興味関心にベクトルが向いている「同級生・新庄剛志」の立ち回り方を誰よりも理解していた。指揮を執った球宴で時間を共有し、改めてつかみどころのない新庄監督の言動の裏にある深層心理を理解した。「ああ見えて、めちゃくちゃ考えている」。球宴ではプライベートやオフレコの話で盛り上がった。紆余曲折を経ての海外移住、太っ腹な一面の理由。波瀾万丈の生きざまゆえに愛されるワケがあった。
人間味ある言動が人を引きつけ、組織の結束を促す光景を目の当たりにして、感度の高い53歳が刺激を受けないはずがなかった。ライバル同士の指揮官が生み出すワクワク感が野球ファンにも波及。熱パを演出した真実がそこにあった。
しびれる優勝争いを誰よりも愉しんだ鷹の将。手応えのある決断の連続でつかんだ優勝は格別だ。













