【女子プロレス最強レスラーの告白 神取忍 お前の心を折ってやる(27)】2000年7月、悲願だった天龍源一郎さんとのシングル戦に臨み、顔面が変形。特に左目上が大きく腫れあがり、あまりの風貌に自分でも驚いた。試合後、病院に行き、眼球も骨も異常なしの診断を受けたら、おなかがすいてきた。食事に行ったら、同じ店に橋本真也さんがいた。すごい偶然だよね。
橋本さんは「その顔、どうしたの?」と聞いてきた。天龍さんと試合したと説明。普通「大丈夫か」とか「冷やせよ」って言うと思う場面だよね。でも橋本さんは違った。「せっかくここまで顔を腫らしているんだから、表、歩いてこいよ! これだけ体を張った仕事をしているのがプロレスラーなんだって、みんなに見せてこい!」って。すごいプロ魂だよね。
その時はとにかく空腹だったから、まずご飯を食べたけど、翌日にちょうどテレビの収録があったんだ。試合後は「この顔でどうしようかな」と思ったけど、橋本さんに言われて「ちょうどいい、腫れたまま出よう」と決めた。ところがさ、腫れがどんどん引いちゃってるの。天龍さんに「生卵をゴロゴロしろ」と言われた効果はすごいんだよ。結局3日で普通に戻っちゃった。「何だ、もう少し腫れててよかったのに」と思ったよ。
当時、左目の負傷について「勲章だ」なんて言ったように、あの試合は臨んで良かったと思っている。天龍さんが思い切りやってくれたからね。もし、子供扱いされるとか、いなして終わってしまっては、まったく意味がなかった。
「男性と戦って怖くないのか?」ってよく聞かれる。でも、男性とだろうが、女性とだろうが、どんな戦いにも、絶対安全なんてものは保証されていない。それにリングデビュー前に新日本プロレスの若手選手と練習して散々、殴られてるし「L―1」に向けても打撃の練習を相当している。散々、ボコボコにされている経験があるから、そういう戦いにおいての怖さはないよね。
逆に、怖さを感じるようなら今もプロレスはやっていないよ。「怖さ」と「弱さ」って違うと思うんだ。弱かったら、もっと強くなりたいと練習すればいい。でもリングに上がって怖さ、恐怖心が出たら自分の中ではもうダメだね。今まで、リングに上がって怖いと感じたことはない。負けたら「まだまだ弱いよな」って思うからずっと練習するわけ。まだ自分の中では完成していないんだ。
容赦なく戦ってくれた天龍さん、プロの姿勢を示してくれた橋本さん。自分にとって本当に、思い出深い一戦になった。次回は、男子との試合や総合格闘技など、いろんなジャンルで戦ってきたけど、女子プロレスラーとの戦いについてもお話ししたい。












