【女子プロレス最強レスラーの告白 神取忍 お前の心を折ってやる(5)】中学時代を過ごした1970年代後半は校内暴力なんて言葉がそこら中で聞こえる時代だった。周りには暴走族の子もいてバイク事故で亡くなってしまった人もいた。シンナーを吸う人もいたけど、自分は体に悪いから絶対やらなかった。ケンカは強かったけど、不良グループにどっぷり入り込むこともなかった。
なぜ荒れた道に突き進まなかったのか。母親が褒め上手だったことが影響しているかもしれない。母親はいつも「お前はできるから。幸せになれる子だよ」と否定することなく言い続けてくれた。周囲がどれだけ「スカートをはかないのはおかしい」と言っても「好きにしていいんだよ」と強制しなかった。母親の言葉が自分を守ってくれたんだと思う。60歳になった今でも、そういうことを言われるんだ。だから今、子供にお母さんが暴言を吐いちゃう場面を目にすることがあるけど絶対にやめてほしいな。
話は戻るけど、中学時代は不良少女とまではいかなくても、礼儀がまるでなっていなくて、本当にあいさつができない子だったのは確か。自分の中で「頭を下げたら負け」っていう変なルールがあったんだ。近所のおばさんに「こんにちは」と言われても、顔をそむけて「ふんっ」とかやってしまう。母親に「頭下げなさい!」って無理やり頭を押されたりしてた。親戚が集まる正月とかでも「こんにちは? ふざけんな!」って思ってたから。親も泣くよね。
柔道を始めたのはそのあたりにも理由があった。中学の内申書、特技の欄に格闘家とか武道家というのを書いたらかっこいいなと思って柔道に興味を持った。それを父親に言うと「体も大きいしバレーボールはどうだ?」と球技を勧めてきた。でもチームプレーは嫌いでできない。たまたま父親の知り合いの知り合いが柔道の町道場をやっていてね。親にしてみれば自分で希望したんだし、礼儀作法も身につくという考えもあったようで、始めることになった。一つ言えるのは、強くなりたいなんて目標はまったくなかった。
町道場では、まず形から入る。「神前に対して礼、相手に対して礼」と毎回、必ずやるんだ。週3回、真面目に通うようになったら「神前に礼!」も、あいさつも自然にできるようになった。ある意味、武道ってすごいなと思う。
当時は町道場が結構盛んで小学生でも強い子がいた。こっちは初心者でも力自慢だったのに小学生の男の子にポンポン投げられちゃってさ。もしあの時、相手にならないぐらいの小学生だったら、楽しみながらの柔道で終わっていたかもしれない。でも投げられたことがすごく悔しくて「これは負けられない」「強くなりたい」と闘志が湧いてきた。












