阪神は14日に同球団OBの藤川球児氏(44)が新監督に就任すると正式発表した。今季限りで退任した岡田彰布氏(66)の後を受け、来季で球団創設90周年を迎える猛虎の指揮官の座に就く。抜群の実績と知名度を誇った前監督の後任としての重圧や、コーチなどの指導者経験のなさも不安視されるが、火の玉右腕の人となりをよく知る複数の球団OBたちは「虎の将」としての資質に迷いなく太鼓判を押した。

 傷心のシーズン完全終戦から一夜明けたこの日、甲子園球場のクラブハウスには岡田内閣を支えてきたコーチ陣たちが続々と足を運び、球団と来季以降の話し合いに臨んだ。藤川新監督とともに現役時代を戦った藤本内野守備走塁コーチは「来年もう一度、阪神球団のためにやるということです」と残留を明言。一方で今岡打撃コーチは今季限りでの退任が発表されるなど、組閣作業は着々と進行している。

 藤川新監督は日米通算61勝39敗、62ホールド、245セーブという圧倒的な実績に加え、的確で分かりやすい野球解説者としてのスキルも好評。2020年まで現役だったこともあり、現チームメートの大半は見知った仲。今もピッチングスタッフを中心に信奉者は多く、次期監督としてこれ以上の人材はいないだろう。

 とはいえ、粟井社長が前日13日の会見で「阪神の監督というものは重たい仕事なので…」と思わずこぼした通り、西の人気老舗球団は一筋縄ではいかない。熱狂的なファンの存在に加え、報道過多な環境。昨年は38年ぶりとなる日本一を達成したばかりとあり、周囲が求めるハードルも一層高くなっている。何よりも、球界全体を何度もうならせてきた知将・岡田前監督との比較から逃げることはできない。

 ここまでフロント畑を歩んできた藤川新監督にとっては、コーチなどの指導経験がないこともウイークポイント。同じくコーチ経験なしで阪神で指揮を執った金本元監督は4位→2位→6位と結果を残せず、事実上の解任に至った〝虎ウマ〟があるだけに不安視する向きも根強い。

 だが、藤川新監督が10代の新人選手だった頃から知る球団OBは「球児なら、指導者経験のなさはさほど大きな問題にならないと思う。野手のことなど自分の分からないことは、他人の意見を素直に取り入れる柔軟さがあるからね。今年の夏ごろに一度会った時には、将来的な監督就任への意欲もしっかり示していた」と語った。

 別のOBも「複雑なチーム事情も背景にあったかもしれない中、考えようによっては〝損な役回り〟を引き受けてくれたところに覚悟が伝わってくる」と新政権への支持と敬意を表明した。

 虎不動のクローザーとして鉄火場のマウンドに立ち続け、チームの勝敗を一身に背負ってきた火の玉守護神。困った時に頼るとしたら、やはりこの男しかいない。

藤川新監督は入団以来、虎一筋(左は野村監督、1998年)
藤川新監督は入団以来、虎一筋(左は野村監督、1998年)