まさに〝決死の12球〟だった。ソフトバンクの長谷川威展投手(24)が、25日に行われた韓国・斗山ベアーズとの練習試合(宮崎アイビー)で猛アピールに成功した。

 昨年12月の現役ドラフトで日本ハムから移籍。8回から5番手でマウンドに上がった左腕は、1イニングを3者連続三振に封じた。ボールの出どころが見にくい変則フォームを武器に、先頭の左打者を外に逃げるスライダーで見逃し三振。続く右打者は外から入ってくるスライダーで空振り三振に仕留め、最後の右打者は内角高め143キロの真っすぐでバットに空を切らせた。

 周囲には感じ取らせなかったが、内に秘めた思いがあった。「僕にとっては野球人生をかけるというか、死に物狂いで結果を残そうと思って上がったマウンドでした」。置かれた立場、チーム事情を理解しているからこそ、決死の思いだった。

 移籍後初の実戦、新天地でのし上がれるかどうかの分水嶺と捉えていた。昨季終了後に、主に強打の左打者を封じる役割を担ってきた嘉弥真(ヤクルト)が戦力外で退団。この春は空いた「枠」を巡る攻防の舞台と位置づけられている。一昨年オフにさかのぼれば、球団はトライアウトで変則左腕の渡辺佑を獲得。もろもろの経緯からもチームのウイークポイントといえ、中継ぎ左腕の台頭が積年の課題だった。「今が本当に人生最大のチャンスだと思っています」。鼻息を荒くし、力が入るのは必然だった。

 試合後、投手全権の倉野チーフ投手コーチの言葉が、この日のパフォーマンスの価値を物語っていた。「ウチの左投手たちは状況を分かっているのかなって思うんです。出遅れている選手もいたりする。こんだけチャンスなのに。1試合とはいえ、長谷川は期待以上の投球をしてくれた。めちゃくちゃ評価しています」。小久保監督もまた「今日は長谷川が一番光っていた」と大絶賛だった。

 まだ2月の対外試合とはいえ、長谷川にとっては調整の場ではない。与えられた目の前の登板機会に、決死の覚悟で――。気概あふれる24歳は、すでに次戦を見据えている。