「王イズムの継承」は使命だ――。ソフトバンクの城島健司会長付特別アドバイザー(47)は、今季からシニアコーディネーター(SC)を兼務。主にファーム部門を統括し、未来の主力育成に本腰を入れる。取材に応じた城島SCは、注目のドラフト戦略や育成方針について言及。王イズムの神髄を知る男は「野手でお客さんを呼べる選手」の発掘、育成に重点を置く球団の総意を明かした上で、その実務の中心を担う意欲を存分に語った。

 球団は王イズムの継承に不変の価値を見いだしている。どういうチームづくりを目指しているのか。

 城島SC 僕らは魅力的なチーム、魅力ある選手の育成とか台頭を期待している。投手は確かに勝利という意味ではすごくウエートを占めている。でも、やっぱりプロ野球というのは、野手がお客さんを呼べるわけです。毎日、いつ来ても試合に出ている。僕らがそうやって教わったわけです、王さんに。だから僕らは毎日出るってことにこだわっていた。スターティングラインアップに自分の名前があるっていうね。これは王さんが現役の時に「ジャイアンツの顔」じゃなく「プロ野球の顔」だったから。王さん、長嶋さんがスターティングラインアップにいないということは考えられなかった。お金を出してチケットを買った意味がないと言われるくらいの方たちだったから、僕らにそういうことを教え込まれたんだと思うんです。

 育成のロールモデルとして城島SCは絶対的主砲・柳田悠岐外野手(35)の名前を挙げる。王会長が2010年のドラフトで導いた唯一無二の大砲。王イズム継承のヒントはそこに隠されている。

 城島SC 王さんの言われていることを理解して、僕らの野球観の根底にある以上は、やっぱり野手でお客さんを呼べる魅力的な選手を育成して、出てきてほしいなっていうのが根本的にあります。僕は捕手出身ですから、投手の整備というのはもちろん大事。1―0、点を取られなければ負けないんだ、十分理解します。でも、やっぱり王さんが言うホームランの華々しさというか、ホームラン打った時の高揚感だったり、子供たちの「うわー、すげー柳田、あんなところまでホームラン打ったよ」っていうね。子供たちが帰りがけに試合には負けたかもしれないけど、そのホームランについて語っているっていうのがプロ野球の魅力なのかなって思うんです。

 プロ野球はエンターテインメントだ。童心のワクワク感が競技人気を高め、魅力あるチームづくりにも不可欠。ゆえに、ブレない信念がある。

 城島SC 160キロ投げる先発投手もすごいし、魅力的。でも、次の日は見られないわけです。どっかのチームが投手中心のチームづくりをするんであれば、我々は魅力的な野手の育成というのは欠かせない。王さんから引き継いだ僕と(一軍監督の)小久保さんがいる間は、外せないテーマだと思うんです。

 野手のスーパースターを発掘するべく、ドラフト戦略でも独自路線を歩み続けてきた。「色」を出すことで外野の懐疑的な声があったとしても、信念は揺るぎない。

 城島SC いつも王さんが言うけどウチのスカウト陣は12球団一だと。見てくださいよ、育成から主力に何人育ったか。外国人が当たらないことばかり言うけど、違う。もちろんコーチの教育もすごい。でも、その原石を獲ってきたのは誰か。スカウトの人たちをもっと評価してあげないと。少なからず僕ら現場は評価している。ウチに合った、王さんの野球に近い原石が一軍の戦力としてやってくれる人たちはたくさんいる。一芸に秀でた人たち。これは今後も、スカウティングを次世代につなげていくために、30年後にしっかり形として現場だけじゃなく、スカウティングも編成も育成も未来に残っていく形をつくっている。それがホークスの財産になると思います。

 現在、球団は4年目の笹川吉康外野手(21)をトッププロスペクトに指名。2年目のイヒネを含め、大化けした暁にはNPBの枠に収まらないポテンシャルを秘めた原石たちがいる。次代のスター候補の台頭は近年滞っているが、信念がブレることは一切ない。城島SCが要職に指名され、引き受けた理由はそこにある。