今季から一軍指揮を執るソフトバンク・小久保裕紀監督(52)が、新春インタビューで「美しいチーム作り」の定義を含蓄ある言葉で語った。鷹の新リーダーは、4年ぶりのリーグV奪回に欠かせない本質的な課題に着目。四軍制を敷き、巨大化する球団にあって、セクションが保身や個人評価に走るのではなく、組織全体が同じ方向を向く重要性をメディアを通
して初めて言及した。

 過渡期の真っただ中で常勝再建という重責を担い、膨大なエネルギーを費やすであろう1年がスタートする。ルーキー監督しての率直な心境をこう明かす。

小久保監督 新入団選手と同じ1期生、同じ声をかけられているけど、それを評価と思ったら大間違いだよね。

 一軍監督として迎える初めてのオフ、秋に最良の結果を得るため腐心するのはシーズン本番から逆算したマネジメント。屋台骨を支える選手とのコミュニケーションは、その最たるものだ。

 小久保監督 外には言えんけど取れたよ。主要どころは取れていますよ、ちゃんと。

 古巣に指導者復帰して一軍ヘッド、二軍監督を歴任。自身の持つリーダー像に変化があったという。

 小久保監督 めちゃめちゃ、この3年でだいぶ変わった。それがあるからっていうのも強みではある。古き良きものと、古くさいものは選別しないといけないし、王イズム継承もって言われているわけだから。ということはある程度、管理。管理というかルール。(王)会長がわれわれに求めてきたものは、やっぱり必要だと思う。

〝王イズム〟継承も小久保監督の重要なミッションだ
〝王イズム〟継承も小久保監督の重要なミッションだ

 就任会見でチームに美しさ、美意識を求めた。具体的に球団全体に浸透させたかった共通認識は何だったのか。

 小久保監督 主力が手本になるチームを作るし、勝つのは当たり前なんで。勝つところに向けて個人が美しさっていうのを少し自分の中に持ち合わせたチームになればいい。組織がデカくなりすぎているでしょ。どっから給料をもらっているのか。孫さんから給料をもらってて、強い組織であるためと、いい選手を育てることに俺は給料を払ってもらってるわけでしょ。選手は勝つための戦力として契約書にサインをして、要は勝負の世界なんて勝つためにやってるわけやんか。組織が強くなるためにそこに戻るしかないわけで。

 指揮官が求める共通認識の範囲は広い。ビジネスも含め「ホークス」に関わる全員に当てはまると言っても過言ではない。

 小久保監督 じゃあ組織がデカくなるにしてもいろんな部署があるよね。でも自分たちの部署さえ数字が上がっていればいいとか、もうこういうのってあんまり必要ないんよ。だから、例えばケガ人を少なくしたんでよかったとか、筋力が上がったからよかったとか。でも結果どうなん、勝ってますかってなった時に、みんな同じ方向を向かないかんから。要は全員が、メディアもそうやけど、結局はホークスのチームが勝つためにやって、いい選手を育てる、作り上げてっていうことでしょ。そこに対して、自分たちの部署さえよければ数字が出せればええっていう集まりで勝っても面白いか、っていう。問いかけ的にはそういうところ。

 ナインだけでなく、球団全体が見識を共有することは簡単なことではない。それでも指揮官の考えにはブレがなく、描く青写真もまた明確だ。言葉にも自然と熱がこもる。

 小久保監督 全員がホークスが強い組織であり、いい選手を育てるためにどうしたらいいかっていうところの議論を最初にできてからスタートしたら、その一つの作品を全員で携われるアーティストになるんじゃないのっていうようなイメージの〝美〟でもある、俺は。デカくなればなるほど、それを抜きに勝って、結局は空洞じゃ面白くないやんっていうのがある。

 リーダーとしては、定義の統一理解を広げる必要がある。だが、個別に伝えることはしないという。ここにも小久保流のやり方がある。

 小久保監督 この話は初めてした。そういうのってメディアを使うんよ、俺は。書いてくれたらメディアを見て、みんな選手もメディアを見て『美なので』って言ってくれているんで。だから話したんやけどね。そういうのって入っていくんで。

 熱意があっても真意が相手に伝わらなければ意味を成さない。普段から小説を読みあさっている理由を「言葉を探しているから」という。常勝のマインドを捨てて挑む新シーズン。難しいかじ取りが待っていることは指揮官本人が理解している。カギは「美」の共通認識と浸透――。2024年の初めに、一番に伝えたかったことだった。