栄光から転落へ。2021年からセ・リーグを2連覇したヤクルトが昨季は一転して5位に沈んだ。天国と地獄を味わった高津臣吾監督(55)が描くチームの再建策は何か。本紙評論家・前田幸長氏の直撃に挙げたのは「打者有利」とされる本拠地・神宮球場での「投手力向上」と「新戦力の台頭」だ。そしてキーマンの一人と目される奥川恭伸投手(22)の復活は――。

【前田幸長 直球勝負】あれだけの強さを誇ったヤクルトが一体どうしてしまったのか。沖縄・浦添キャンプに足を運び、高津監督に話を伺うと厳しい言葉も聞かれた。「層が薄い。底力がない。そこに尽きると思う」。その裏には戦力の底上げ、新戦力の台頭にかける強い危機感と決意を感じ取ることができた。

 就任5年目の高津監督は昨季の反省を踏まえ、どういう野球を目指すのか。その答えは明確だった。「どの時代も一緒でピッチャーなんだよ。しかも神宮でやる限り、バッターが有利でピッチャーが不利なのは間違いない。5点を取られても6点目を取られないかが非常に大きい。大味になる試合も多いけど、野球はピッチャー、野手(守備)がいかに1点を守るか。そこはもう1回やり直したい」。神宮は球場の狭さもあるが、外野のグラウンドがフェンスに向かって下がっているため、打者にとっては〝打ち下ろし〟になる。それだけに投手が失点を防ぐのは難しい。しかし、ある程度の失点を覚悟しながらも、傷口を最小限にとどめる必要がある。

 現状、開幕ローテで確定的なのは昨季10勝の小川と7勝のサイスニード、高橋だろうか。だが、残念ながらそれだけでは十分とは言えない。気になるのは右ヒジの故障で約2年間、登板できなかった奥川だ。ポテンシャルが抜群なのは言うまでもない。その奥川をどこまで戦力として計算しているのかも気になっていた。

 高津監督は「どこまで計算に入れるかでしょうね」と言い「中6日で計算に入れているかと言ったら、していない。1年間の戦力という計算をしているかと言ったら、計算もしているし、そうじゃなかった時の計算もする」と話してくれた。やはり怖いのはケガの再発だ。1年間、フルにバリバリで投げるよりも登板間隔を空けながらと考えているようだ。伊藤智仁コーチも「80~90イニングくらい投げてくれたらなあ」と期待を口にしていた。

 とはいえ、チームを優勝に近づけるためには奥川が7勝や8勝止まりでは難しいかもしれない。100イニング以上を投げれば10勝も見えてくるかもしれないが、起用にはある程度慎重にならざるを得ないかもしれない。

 それならば、やはり奥川以外にも新しい芽が出てこなければならない。「何かあった時に誰かが出てこないと上位の位置にいられない」と話す高津監督に「その中でも特に期待しているのは?」ともうひと押ししてみたところ「それ、言えんなあ」と笑ってはぐらかされてしまった。

 おそらく具体名を挙げることでチームの士気などに影響することを懸念したのだろう。逆襲に静かに燃える高津監督。頭にある〝秘密兵器〟が誰なのか注目したい。

(本紙評論家)