猛虎の黄金時代が続くか――。本紙専属評論家の伊原春樹氏(75)が阪神の沖縄・宜野座キャンプで岡田彰布監督(66)を直撃。2リーグ制以降、初の連覇への手応えと自信を聞いた。今季のライバルから、新戦力への期待、チーム課題まで両氏の青空会談は白熱したが、歴戦の伊原氏が「恐れ入った」と舌を巻いたのは知将の「目」。並の監督が持ちえない“特殊能力”に着目した。

【新鬼の手帳・伊原春樹】私が阪神キャンプを訪れたのはコロナ禍前の2020年以来だが、果たしてこんなチームだっただろうかと目を疑うような王者の風格と活気があった。

 シートノックの間にベンチ前で迎えてくれた岡田監督には、まず「オカ、おめでとう」とあいさつから。照れもせず感謝を示したのが彼らしいが、続けて「どうだ、連覇の可能性は高いんじゃないかと見ているんだけど。ぜひ、歴史を塗り替えてほしいね」と軽く水を向けると「まあ、そうでしょうな。普通にやればいけるんちゃうかな」といきなり強気な言葉が返ってきて驚いた。

 その強気も当然だと思えるチームが眼前で躍動していた。主力の多くが若く、伸びしろがある。午前中のシートノックと追加の内野連係は近年になく「素晴らしい」と手放しでたたえたい内容だった。走者を意識した素早い選択と、常に低く徹底された返球、スムーズな中継プレー。広い甲子園で勝ち抜くためのスキのなさを、チーム全体で突き詰めているのが分かった。

「感心する守備だね」と私が正直な感想を漏らすと、岡田監督はニヤリとしながら「打つのは技術があれば打ちますからな。ウチは去年からコレばっかりですわ」と胸を張った。みっちり約1時間、キャンプ前半にここまで守備連係の練習に時間を割くチームは知る限り今は他にない。

 オフに目立った戦力補強はなかったが、ひと言「いらんですわ」で片付けるのも彼らしい。日本シリーズ活躍の論功行賞でノイジーを残したというが「外国人はアテになりません」とバッサリだった。打線は日本人で組むのが理想という。

 阪神がここまで強くなった大きな理由として「スカウトの腕が昔より上がった」と褒めていたが、確かに良素材がそろっている。この日も右翼方向を指しながら「野手もいい選手が多いんですわ。あの前川(右京)もいいですよ。森下だって、去年あれしたといってもウカウカできんですよ」と厳しい視線を向けていた。「佐藤輝明はどう?」と問うと「そら今年はやってくれな困りますわ」と笑っていたが、少々そっけなく聞こえたのは、全体戦力への手応えがあるからだろう。期待が小さいわけじゃない。佐藤がやれば万全だ。

 一方で他チームも補強を重ね「打倒阪神」でやってくる。今季のライバルはどこか。DeNAは打線強力だが投手力に不安があり、広島は全体的に上積み不足。となると、阿部新監督の巨人が1番手か。岡田監督も「巨人でしょうな。打線はええからね」と同調した。だが脅威とまで感じている様子はなかった。

 さらに私がこの日、岡田監督の“すごみ”を感じたのは、彼の「目」だ。私と応対していたのはブルペンへ移動しての投手練習を含め約2時間。その間、昔話や質問によどみなく応じながらも、両目は一度も選手、コーチの動きからそらさなかった。眼球はキョロキョロと動き、全体を見回している。私自身も観察眼を大事にした指導者であろうとしてきたが、これはやろうと思ってできることではない。恐れ入った。

 会話の中で彼は「選手には何も言いませんわ」とも話していた。実際にその通りなのだろう。あれだけグラウンド全体に目を配っていれば、自然と課題は見えてくる。あとは各コーチに気付きと方針を伝えればよい。守備練習の良い緊張感も、監督の視線から生まれていたのだ。旧知の平田ヘッドがわれわれに寄り付かなかったのも理解できる。常に“見られている”からだったのだ。

 投手陣は村上、青柳、西勇、大竹ら実績組に加え、才木ら若手の台頭も目立つ。捕手は梅野、坂本の併用で大丈夫だ。予想をするには気が早いが、今季もセ・リーグは阪神が絶対的な優勝候補だろう。球団初の連覇を成し遂げる可能性は高い。 (本紙専属評論家)