現役プロ野球選手によるパワハラ問題が球界内外に波紋を広げている。楽天・安楽智大投手(27)が後輩選手たちに蛮行を働き、球団側は事実上の解雇処分とした。1日には正式に自由契約選手として公示された。今回のようなハラスメントはなぜ起きるのか。そして再発防止のためには何が必要か。本紙専属評論家の伊原春樹氏は球団による選手教育はもちろん、現場レベルでの〝目付け役〟として、この日SNS上で騒動を謝罪した田中将大投手(35)らに喝を入れた。

【新鬼の手帳・伊原春樹】安楽自身は軽いノリでやっていたのかもしれないが、今の世の中でそうはいかない。本人はいたずら程度の感覚だろうが、やられた側がどう思うかがすべてだ。

 野球だけではなく、スポーツ界全体に言えることだが、特に日本は先輩と後輩の文化が根強くある。私が現役で選手をやっていた頃は、いたずらや嫌がらせの類いのものは日常茶飯事で行われていた。試合が始まる前にスパイクの両足の靴ひもがほどけないようにキツく〝かた結び〟し、キャッチボールに出遅れて困る若手もいた。試合が終われば毎晩のように3、4人を飲みに連れて行って、後輩に何度もイッキさせていた主力もいた。今の時代であれば、どれも一発でアウトだろう。

 かく言う私も若手の頃にトイレで立ちながら用を足していると、背後から尻に指を立ててくる先輩がいた。後輩の立場ではあったが、あまりにもしつこく何度もやってくるので「テメー、いい加減にしろ!」と怒鳴ったら二度とやらなくなったなんてこともあった。

 それはさておき、小中高と野球だけをしてきたわんぱく小僧というのは少なからずいる。安楽も分別がつかないまま悪ふざけくらいの感覚でやっていたのだろう。それに安楽もそうだろうが、一軍にずっと出ながら6、7年もしてくるといろいろなことが自由にできるようになってくる。そういった選手が間違ったことをした場合には「それはマズいだろ」「やめろ」ともう一つ上のリーダーが止めなければならない。楽天の投手陣で言えば、田中将らがそういう立場だろう。

 プロに入ってきて1年目、2年目くらいの若い人間は内心では「ふざけんじゃねえ」と思っていても、球団の人とちゃんと話せる機会は年に1度の契約更改くらいしかない。今回の件はテレビのニュース番組などでも報じられているが、喉元を過ぎればまた同じようなことをする人間が出てくる。

 球団の方はコンプライアンスの勉強会は年に2、3度と言わず、もっとやっていかないといけない。社会人野球でも監督やコーチが2か月に1度くらいは面談している。それがプロ野球ではシーズンに入ったら球団は日々の勝った、負けたで一喜一憂している。それではいけない。プロの方がはるかに遅れている。若手からベテランまでしっかりと話をするべきだ。

 自由契約となった安楽は今後、どのような道を歩むのか。他の球団は怖がってなかなか手を出せないだろう。とはいえ、まだ27歳。独立リーグや海外もある。人生の中の大きな勉強として、どこかで続けてほしい気持ちもある。(本紙専属評論家)