楽天・安楽智大投手(27)が複数の同僚選手にパワハラ行為を働いていた疑惑が浮上し、球界内外で波紋を広げている。球団側は安楽の行為を問題視。25日に予定されていた契約更改交渉を無期限延期としたばかりか、来季契約に向けた保留者名簿からの除外まで示唆している。このままでは選手生命が絶たれる可能性もあるが、周囲はどう見ているのか。安楽本人を知る関係者に聞くと意外な「裏の顔」が浮き上がってきた。

 大きな衝撃が走った。安楽を高校時代から知る球界関係者は神妙な面持ちで「彼の問題行為を聞いた時、『まさか!?』という思いと『やっぱりか…』という複雑な気持ちになったのが正直なところですね」とコメント。安楽の人物像を深く知り尽くしているだけに「事実であれば本人に猛省を促したい」と当人以上にショックを隠し切れない様子だ。

 安楽は今季終了後、複数の後輩選手から日常的に暴言を吐かれたり、人格否定を繰り返されていた被害を訴えられている。さらに選手ら関係者の話を総合すると、安楽はロッカールーム内において若手の下着を脱がして下半身を露出させたり、食事の誘いを断った後輩に深夜にしつこく電話をかけたりする極めて陰湿な「いじめ行為」もあったという。かつて楽天に在籍していた元選手は安楽に頭部を平手打ちされたことにより、むち打ちの症状が出たことを明かすなど複数の事例が疑われている。

 すでに球団はコンプライアンス担当者らによる聞き取りを実施。詳細は明かされていないものの安楽が複数選手に対しパワハラ行為があった事実は認めている。数年前から「日常的に行われていた」という点を鑑みると、プロ入り前から同様の行為を行っていた疑惑も浮上してくる。実際はどうだったのか。冒頭の関係者に聞くと「目の前で(パワハラ行為を)見たことはありませんが、その気配は何となく感じ取れた」と明かす。

 そして「彼は野球強豪校で規律が厳しいことでも有名な済美高出身ですからね。当時の野球部も例外なくその傾向があり、その中でも縦社会というか上下関係は半端なかった。上級生の言うことは『絶対』で歯向かえば何をされるかわからない。その分、後輩には何をしてもいい。そういう環境下で育ってきたわけですから、プロ入り後も高校時代の上下関係や後輩に対する態度を踏襲したのでしょう」とも続けている。

 その上で同関係者は「一度本人と話すと分かりますが、本当に先輩や年上の関係者には礼儀正しいのですが、後輩や年下に対しては別人のような態度を見せることもあるので。昭和の時代ならともかく今の時代でそれをやってはダメ。手遅れかもしれませんが、周囲がもう少し彼に野球以外の社会教育を施してくれていれば、今の状況は変わっていたのかもしれませんが…」と指摘した。

 一部、野球強豪校に今も残るといわれる上下関係を含めた「あしき慣習」。その中で野球に打ち込んだ安楽はプロ入り後も“大きな勘違い”を続けてしまったのかもしれない。

 ただ、暴言や暴行などのパワハラ行為は育った環境を問わず絶対に許されるものではない。すでに球団側は予定されていた契約更改を無期限延期。自由契約を含めた重い処分を下す可能性を示唆している。安楽は今季チーム救援陣の一角として昨季の52試合を上回る計57試合に登板。3勝2敗、防御率3・04の好成績を残した。シーズン50試合以上登板は3年連続となり、チームに欠かせない中継ぎ投手となっていた。

 現在、安楽は自宅待機中の身。森井球団社長は「ファンの方にご心配とご不安を与えてしまって申し訳ございません」と陳謝した上で「事実確認を行っている」という。所属選手やスタッフら約100人に情報提供を求めてアンケートを送付し「双方(の情報)を照らし合わせて適切な対応をしたい」とも説明。今回の騒動を「内部に何らかの問題を抱えている一つの表れ。球団全体の管理責任」と猛省し、迅速丁寧に調査を行う構えでいる。球団が来季も契約する権利を持つ保留選手名簿(来月1日公示)の提出期限が迫っており、調査結果を示すには「一つのラインになってくると思う」とした。

 しかし、処分次第では就任した今江新監督のもとで再起を図る戦力構想にも大きな影響を及ぼす。今季リーグ4位からの来季巻き返しに水を差しかねない安楽の問題行為。被害選手へのケアとともに全容解明と再発防止に向けた球団の取り組みに注目が集まる。

☆あんらく・ともひろ 1996年11月4日生まれ。27歳。愛媛県松山市出身。右投げ左打ち。済美高時代は1年生から背番号1を背負うと2013年の2年時にセンバツ出場し、当時の2年生としては甲子園最速の152キロをマーク。チームの準優勝にも大きく貢献した。同年のU18W杯メンバーにも選出された。14年のドラフトでヤクルトと1位指名権を争った楽天が抽選の末に交渉権を獲得。楽天に入団し、1年目の15年10月5日のソフトバンク戦でプロ初登板初先発初勝利。20年から中継ぎに本格転向し、21年以降は3年連続でシーズン50試合以上登板を果たすなど「ブルペンの要」として定着している。