惨事寸前の一撃は、米球界全体を震え上がらせた。ロイヤルズのセス・ルーゴ投手(36)が10日(日本時間11日)、本拠地カウフマン・スタジアムで行われたレンジャーズ戦で、打球を顔面に受けて緊急降板した。もっとも今回の騒動が全米規模に広がった最大の理由は、単なるアクシデントの衝撃だけではない。107マイル級のライナーが投手の顔面を直撃しながら、試合後のCTスキャンで異常なしと判明した――。この「恐怖」と「安堵」の落差が、米メディアを一気に動かした。

 場面は4回一死。レンジャーズのブランドン・ニモ外野手(33)が放った打球は、時速106・6マイル(約172キロ)の強烈なライナーとなり、マウンド上のルーゴの額付近を直撃した。ルーゴはその場に倒れ込み、場内は騒然。ニモも一塁到達後、すぐにマウンドへ向かった。2人は2016年から22年までメッツで同僚だった間柄で、その偶然もまた映像の衝撃を増幅させた。

 ただ、試合の細部以上にクローズアップされたのは、その後の展開だった。ルーゴはトレーナーの確認を受けた後、自力でベンチへ下がり、3回1/3で降板。額には大きな腫れが残ったが、試合後に受けたCTスキャンでは問題なしとされた。ロイラルズのクアトラロ監督も当初は慎重な姿勢を見せていたが、最悪の事態が避けられたことで、球団周辺には安堵の空気が広がった。

 この一報は地元の枠を超えた。地元有力紙「カンザスシティ・スター」が大きく報じたのをはじめ、米全国紙「USAトゥデー」もルーゴのアクシデントを詳報。さらに米スポーツ専門局ESPNの深夜番組「スポーツセンター」でも取り上げられ、SNS上では映像が瞬く間に拡散した。勝敗や順位を超え、メジャーリーグの試合中に起きた「命に関わりかねない瞬間」として全米が息をのんだ格好だ。

 ルーゴは昨季、オールスターに選出され、サイ・ヤング賞投票でも2位に入ったロイヤルズ先発陣の柱。今季は試合前まで2勝4敗、防御率3・91と苦しみながらも、チームの屋台骨を支える存在だ。一方のニモも今季からレンジャーズに加わり、打線の一角として奮闘中。旧友同士の間で起きた予期せぬアクシデントだったことも、報道の温度をさらに高めた。

 試合は延長10回の末、レンジャーズが6―4で勝利した。だが、この夜に米球界を駆け巡った主題は、スコアではなかった。107マイル級の打球が顔面を襲う悪夢。そこからCTスキャン異常なしという奇跡的な結末。恐怖に震え、無事に胸をなで下ろす――。ルーゴのアクシデントは、全米に野球の危険性と選手生命の尊さを改めて突きつけた。