【元局アナ青池奈津子のメジャーオフ通信】「スーパーに行って、自分で野菜を選ぶのが好きなんだ。3時間でもいられる。トロントのいいところは、スーパーがとてもファンシー(豪華)」

 野球以外の好きなことを聞いた時に迷うことなく「料理」と答えたケビン・ガウスマン。「以前はインタビューが苦手だった」と打ち明けているが、全く想像できないくらいに自然体でのんびりな話し方だ。

「自分はルーティンがあることがとても好きなんだけど、その点、料理はレシピ通りに従えばおいしくなるのがとても性に合っている。レシピを覚えれば覚えるだけ、少しずつ自分の改良を加えていけるのも実験みたいで楽しいしね。考えてみると、野球も同じ感覚なんだ。試合の準備をしている時は料理のレシピに従っている感覚と似ている。いつも行うチェックリストがあって、それを行った上で少し変化を加えてみると、うまくいったり、いかなかったり。そこがツボなんだ」

 引退後には「料理学校へ行くつもり」という。人生が一歩違っていたら野球選手ではなく、シェフとして生きていた可能性についても触れつつ「結局、そこまで料理がうまかったわけじゃないんだよ…なんてね、どうだろ」と自問自答する。

「実際、失敗することもたくさんあって、チキンフライドライスは何度作っても何か足りないんだ。ごま油かな? でも、野球をやっていなければ料理人の道に進んでいたと思うし、オフは本当によく料理している。食材を買いに行くことや新鮮な野菜を直接選ぶといった小さなことに喜びを感じるんだ。シーズン中もオフの日にスーパーへ行くと、平和な気持ちになる。野球場から離れて自分がノーマルな人間なんだと感じる瞬間だね」

 アボカド、マンゴー、バナナの選び方にも「こだわりがあるんだ」と力説するケビン。ノーマルかどうかは別として、米国在住の料理好きなら間違いなくこだわりがあるはずの「感謝祭ホリデー」でも「七面鳥の丸焼きは数日前からコンパウンドバターを作って臨む」と言うほどに毎年、気合が入っているという。

「これが一番大事。無塩バターにタイム、ローズマリー、オレガノなどのイタリアンハーブ、レモンゼスト、チーズ、ガーリックも入れてグラインダーで混ぜ、クッキングシートに包んで一度冷凍させ、焼く時に皮と身の間にうまく差し込むと外がカリッと焼けて、中がジューシーに焼けるコツなんだ。結婚して家族のために僕が作るようになって6年。大人数の料理は大変だけどやりがいがあるね」

 これは余談だが「日本では感謝祭ないの?」とケビンに聞かれ「米国特有のホリデーだと思う」と答えると「カナダでもあるよ。しかもアメリカより早いんだ。昨年、ポストシーズンでマリナーズと対戦するって時にサンクスギビング(感謝祭)で、トロントでサンクスギビングのディナーが出てきた」とのこと。ちなみにカナダでも感謝祭では七面鳥を食べるそうだ。

 今年の米国の感謝祭は23日(日本時間24日)。今頃、ケビンは準備で忙しくしているだろうか。

 ☆ ケビン・ガウスマン 1991年1月6日生まれ。32歳。コロラド州センデニアル出身。右投げ左打ち。190センチ、86キロ。2012年のドラフトで指名されたオリオールズと契約。13年5月23日のブルージェイズ戦でメジャーデビュー。初の開幕投手を務めた17年に自身初の2桁となる11勝。ブレーブス、レッズを経て19年オフにジャイアンツと契約し、21年に球宴初出場。21年オフにFAとなり、ブルージェイズと5年総額1億1000万ドル(約164億5000万円)の大型契約を締結。22年に12勝を飾り、23年6月27日には古巣ジャイアンツ戦で通算1500奪三振を達成。今季も3年連続2桁勝利となる12勝をマークした。