【元局アナ青池奈津子のメジャーオフ通信】フリーエージェント(FA)って、どんな感じなのだろう? 選手にとってキャリアの華々しい瞬間の1つであり、ここまで頑張ってきた証しがFA権の獲得だ。新たなチームを決めるという過程は楽しいのだろうか。やはり難しいことなのか。果たして何を基準にして決めるのだろうか――。

 史上最大の契約が予想されるエンゼルスからFAとなった大谷翔平投手について日々のニュースを追っていく中でさまざまな疑問が浮かび上がってくる。考えていても分からないことは当人たちに直接聞いてみるのが、やはり一番だ。

「僕はFAの間、眠れない」と言ったのは今オフ、パイレーツからFAとなったカルロス・サンタナ内野手(37)。「履歴書を出して買い物の相談をする感覚」とはブルワーズからタイガースへの移籍が決まったばかりのマーク・カナ内野手(34)のコメントだ。そしてブルージェイズのジョージ・スプリンガー外野手(34)は「子供が生まれるって時でなかなか落ち着かなかった」。

 数字や臆測ばかりが飛び交う報道の裏側を、こうして掘り起こしてみると実にたくさんの興味深い物語が隠されていた。

 フレンドリーでおしゃべり上手のロス・ストリップリング投手(33=ジャイアンツ)はFAについて「とても楽しくエキサイティングであると同時にとてもストレスフル」と評している。自ら人気のポッドキャスト番組を配信していたこともあり、その一語一句には十分な説得力がある。

「自分はFAになるまでドジャースとブルージェイズの2球団しか知らなかったのが、突然いろいろなチームと(契約交渉をする上で)ZOOM(ビデオ通話)で話し始めるんだ。例えばオリオールズのブランドン・ハイド監督。彼のことは(マリナーズの)ロビー・レイ投手との(やじを飛ばした)騒動を見て好きになれそうにないな、なんて思っていたけど、ズームで数回話して素晴らしい人格者だったことがわかり、すっかり好きになった。FAはそういう機会をもらえる。確か12チームと話をしたから、たくさんの関係性を築けたのが楽しかった」

 外向的なロスらしい感想だ。

「その裏にあるのは、不明の数々。いろんな球団と話したかと思ったら、3日、4日、5日とたっても誰からも何も(オファーを)聞かず、忘れられたのかなって。ウインターミーティングが始まって、アンドルー・ヒーニーが契約した、タイワン・ウォーカーが決まった、次はホセ・キンタナだって聞こえてきて、自分はまだここにいるんだけど…、誰か僕について何か言ってないのか? 不安と忍耐力との勝負でもあった。これを毎年やるのは精神的にきついとも思ったね」

 待ちぼうけを食らった感はあったものの、実際にオファーは多く最終的に6球団、そこから3球団と絞っていったそう。

「幸いにも自分はこれまでずっと勝ちチームでやらせてもらってきたから、勝つことに慣れているし、勝ちたいし、勝つことを期待されたい。だから、現在勝ちチームか、勝つ方向に向かっているか、勝つ意思が強いチームかにフォーカスを絞った。あとは、話す相手との相性。3つ目は家族だった。妻が心地よく過ごせ、2人の子供たちを連れ回しても大丈夫だと思える安全で過ごしやすい家を見つけられる場所」

 旧チームメートのアレックス・ウッドに電話してサンフランシスコの住宅事情なども調査した。

「ブルージェイズ、カブス、ジャイアンツと、どこの球団もいいなって思えるところだったけど、カブスのオファーが金額が低かったからブルージェイズとジャイアンツに絞った。2チームは同額だったけど、ジャイアンツはブルージェイズがくれなかった2年目のオプトアウトオプションをくれたんだ。2年半過ごした大好きなチームだったからかなり悩んだけど、ジャイアンツのファラホン代表はドジャース時代のGMだし、ウディー(アレックス・ウッド)やジョク(ピダーソン)もいたから安心できる場所だと感じたんだ」

 ロスは、自分の選択にすごく満足している、と笑顔を見せた。