【新IDアナライザー・伊勢孝夫】阪神・中野拓夢内野手(26)はWBCに出場したことで本当に大きく成長した。5打数2安打と3戦連続のマルチ安打を記録した17日の中日戦(バンテリン)でも、すべての打席でファーストストライクを振りにいくことは一度もなかった。良く言えば積極的、悪く言えば強引な打ち方が目立っていた昨季までとは、まるで違っている。〝負ければ終わり〟という重圧がかかる国際大会で「チームが勝つために自分は何をすべきか」という課題に真摯に向き合ってきたのだろう。

 昨季、135試合に出場し、わずか18四球しか選べなかった男が、今季は出場36試合ですでに16四球。打撃フォームそのものは変わっていない。変化したのは打席内での心持ちの方だろう。「打ちたい、打ちたい」という気持ちを抑え、チームバッティングに徹した結果、打率も出塁率も大きく上昇。何とも面白い話ではないか。

 昨季までの中野は打率こそ高かったものの、7番、8番あたりの打順に置くことが適切な打者だと私はみていた。だが、今や彼は「日本一の2番打者」を狙えるまでの器だ。侍ジャパンでチームメートだった近藤(ソフトバンク)あたりから、多くのものを学んだのだろう。このスタイルを継続できれば、長丁場のシーズンにおいても大きく数字を落とすことはない。最終的には打率3割、出塁率3割8分を目指してもらいたい。

 チームも3―1の接戦をもぎとり6連勝。用兵巧者・岡田監督の戦いぶりには、まだまだ十分な余力すら感じる。投手陣は言うまでもなく盤石。夏場までに貯金を15まで伸ばせれば、一気に〝アレ〟へ向けて押し切れてしまうのではないか。そのためのキーマンは佐藤輝、木浪、そして中野だ。

(本紙評論家)