【米ニューヨーク7日(日本時間8日)】メジャー挑戦1年目のメッツ・千賀滉大投手(30)が順風満帆と言えるスタートを切った。デビュー戦となった2日(同3日)の敵地でのマーリンズ戦で、伝家の宝刀「お化けフォーク」をこれでもかとサク裂させての初登板初勝利。全米にその実力を証明し、すでに定着している日本人投手の評価を一層高めるパフォーマンスだった。

「ホコラシイ。ニッポンジン、ホコラシイ!」。メッツの練習中や選手ロッカーで響くカタコトの日本語――。千賀はもちろん、日本人スタッフ、時には日本の報道陣に向けて発せられている。声の主は、メッツのホットコーナーを守る正三塁手のエドゥアルド・エスコバー内野手(34)だ。メジャー13年目を迎えるベネズエラ出身のベテランは、直近5年間で110本塁打を放っている実力者で、チームのムードメーカー的存在でもある。

チームの中心選手でもあるエスコバー(ロイター)
チームの中心選手でもあるエスコバー(ロイター)

「ニッポンジン、ホコラシイ」。エスコバーが仲間内で口癖のように発する理由は、日本野球へのリスペクトと異国の地にやってきたばかりの千賀を歓迎する思いやりに満ちている。スプリングトレーニング中「日本の野球や日本人に対して敬意を表する言葉を教えてほしい」と、千賀と日本人スタッフに尋ねたエスコバー。自らもベネズエラ代表として出場した第5回WBCで、見事な結束力を発揮して頂点に駆け上がった侍ジャパンの戦いぶりと、キャンプで勤勉にトレーニングに励む千賀に、どうしても日本語でアプローチしたかったのだという。

「僕は何か正しいことをする人を見たら、その人と同じ空間にいるだけで誇りに思えるんだ。だから、僕はコウダイに日本語で『あなたを誇りに思う』と伝えるにはどう言えばいいのかを尋ねた。そして、彼は僕に『誇らしい』という日本語を教えてくれたんだ。だから今、僕はあなたにもお伝えしたい。ホコラシイ」

 世界最高峰のグラウンドレベルで、現役メジャーリーガーにその実力をたたえられることほど日本人にとって名誉なことはない。デビュー戦前の選手ロッカーで「ホコラシイ。あればっか、言ってくるんですよ」と、うれしそうにはにかむ千賀が印象的だった。

 開幕直前にマイアミで開かれた選手全員参加の決起集会。店を選び、全員分の支払いを済ませてスマートに帰っていったのがエスコバーだった。人として成熟したチーム内でも慕われる中心的人物から示された信頼。入団間もない千賀にとっては計り知れない意義があった。

 言葉や文化の壁を越えて、日本時代と変わらずオンとオフで愛嬌を振りまく千賀の人間性が受け入れられている。侍ジャパンが躍動したWBC制覇の追い風もある。何より、デビュー戦で全米に向けて期待通りの投球を披露した千賀の「勝負強さ」も好循環に拍車をかけている。

 長丁場のシーズン、今後訪れるであろう苦境で手を差し伸べてくれる仲間がどれだけいるかが、成功のカギを握るはずだ。「センガサン、ホコラシイ」と両手を合わせてお辞儀をするエスコバーの姿が、千賀を取り巻く環境を物語っている。

 8日(日本時間9日)に本拠地シティ・フィールドのマウンドに初めて立つ千賀。「しっかり投げて、早くこのチームに認められる存在になりたい」。そう語る30歳が、日本の誇らしさをさらに広げていく。