這い上がれるか――。ノアのGHCヘビー級王者・清宮海斗(26)が、プロレス人生最大の危機に直面している。21日の武藤敬司引退興行では新日本プロレスのIWGP世界ヘビー級王者オカダ・カズチカ(35)に惨敗。奈落の底に落とされた若き王者は休むことを許されず、V5戦(3月19日、横浜武道館)では元3冠ヘビー級王者ジェイク・リー(34)を迎える。失意の男は今、何を思うのか。絶対に負けることは許されない大一番に向け、胸中を激白だ。
屈辱の一戦だった。武藤の代名詞であるシャイニングウィザードを継承している清宮は、オカダのレインメーカーにカウンターの閃光魔術弾を合わせるなど食い下がったが、結果は16分32秒で完敗。〝師匠〟の引退興行に花を添えることはできなかった。
しかも、GHC王者がIWGP世界王者に敗れた事実は重い。試合後は言葉を発することすらできない中で、ジェイクから「お前、もう休めよ」と冷たく言い放たれ、タイトル戦が決定した。
取材に応じた清宮は「もう這い上がるしかないので」と吹っ切れた様子をのぞかせる。オカダとの再戦を希望する気持ちはあるのか問うと「もう一回っていうのは、とても今の自分の立場で言えることではないですから。それよりも、あの一戦で学んだ多くのことや感じた差を生かして、ノアのリングに全力で集中していくことしか考えていません」と静かに語った。
オカダとのシングルマッチの引き金となった1月の新日本横浜大会での〝顔面蹴り事件〟以降、清宮のもとにはSNSを通じて、数百通もの誹謗中傷のダイレクトメッセージ(DM)が届いた。
「どんな言葉もプラスにしたい」という考えですべてのDMに目を通していたところ、風向きが変わったのがシングル戦後だ。誹謗中傷に交じり、応援する声も届くようになったのだ。
「今は厳しい言葉よりも応援してくれるメッセージの方が多いくらいになっていて、そういう変化が自分の背中を押してくれています。家族や友人の声もある。ドン底に落ちて、初めて気づいたこともたくさんありました。もちろん厳しい言葉も受け止めて、すべてを力にしていきたいです」
ただし、再出発の道は決して平坦ではない。次なる相手は、全日本プロレス最高峰の3冠王座を2度戴冠したジェイク。IWGP世界王者に続き、元3冠王者にも不覚を取るようなことがあれば、GHCの権威が失墜するだけでは済まされない。再浮上への道が完全に断たれてしまう。
その事実を承知した上で「そういう(元3冠王者)部分でも、対外敵という部分でも、ベルトを持っている人間が2度も負けるなんてあってはならないことだと思うし…。本当に、今回も大きな戦いだと思っています」と、自らを奮い立たせるように口にした。
180センチ、98キロの清宮に対し、ジェイクは192センチ、110キロ。191センチ、107キロのオカダに続き、体格で上回る相手となる。そのため「すごくプロレスラーらしいというか。行動力も実力も兼ね備えていると思います。しかも、かっこいい。体が大きいっていうのは正直、うらやましいです。僕も自分なりにそこを補って戦ってきたつもりです。でも、生まれ持ったパワーには一発で試合の流れを変える強さがあるので」と警戒も怠らなかった。
2020年の参戦から方舟マットの先頭を走った武藤は、もういない。「ドームが終わって、3月19日は新生ノアを見せる大会だと思っているので。そのスタートを切って、ノアを引っ張っていきたいと思います。だから、どんな形であろうと必ず勝ちます」。ゼロどころかマイナスからの再出発。それでも今は前進あるのみだ。












