まさかの〝黒いプラン〟が急浮上だ。プロレスリングマスターこと武藤敬司(60)の引退興行が21日のノア東京ドーム大会で行われ、〝黒いカリスマ〟蝶野正洋(59)がサプライズでリングに登場。引退試合後に強引にリングに上げられた「闘魂三銃士」の盟友は、STFで完全燃焼させたかに見えたが…。大会後、取材に応じた蝶野は「ハメられた」と真相を告白し、自身の引退試合が開催可能となった際には武藤にリベンジすると予告した。
衝撃の展開だった。引退試合で新日本プロレスの内藤哲也と対戦した武藤は、デスティーノに沈み38年のプロレス人生に幕を下ろした。ところが、最後のマイクアピールでファンへのメッセージを伝えている最中に「どうしてもやりたいことが一つあるんだよな。蝶野! 俺と戦え!」と要求したから、さあ大変だ。
蝶野は1984年10月5日の新日本・越谷大会の一騎打ちでともにデビューした同期であり、故橋本真也さんを入れた「闘魂三銃士」で活躍した永遠のライバル。引退試合をPPV中継したABEMAのゲスト解説を務めていた蝶野は、誰がどう見ても断るわけにいかない異様な空気の中、大歓声を背についにリングインした。
ゲストで訪れていた元レフェリーのタイガー服部氏も武藤から呼び込まれ、役者はそろった。サプライズで実現した時間無制限1本勝負は、蝶野がシャイニングケンカキックからのSTFでギブアップを奪い、盟友を介錯した。
まさにプロレス史に残る名シーンを生み出した蝶野だったが、内情は違った。「振り返ると、7月の引退会見の時から武田(有弘サイバーファイト)取締役の、ずっと下を向いて隠しごとをしてそうなそぶりが気になっていたんだよ。やっぱりグルだったね、武藤敬司と。俺もコメンテーターしてて感動してたんだけど、やっぱり武藤敬司は信用できない」と告発した。
「(同じゲスト解説の)棚橋(弘至)が『引退試合で2回も負けるなんて、ないですよね』って言ったの聞いて、俺もああ、そういうこと考えてたのかと。俺も巻き添えくっちゃった」
久しぶりにリングで肌を合わせた感動よりも「ハメられた」意識のほうがはるかに強いだけに、やられっぱなしでは終われない。蝶野は引退試合を行わないまま2014年4月を最後にリングから遠ざかり、現在は脊柱管狭窄症からの復活を目指している。
そこで「リングに上がることを目標にリハビリをやってるんで。ただ、終わってみないと分からないよね。今日がもしかしたら最後の試合になるかもしれないし。逆に、復帰できたらお返しはしますよ、絶対に。武藤を復帰させる? それしかないでしょうね」と驚きのプランを披露する。
これを受け〝共犯者〟呼ばわりされた武田取締役も「蝶野さんが仮に引退試合をする時は、武藤さんが復帰するんじゃないですか。他のケースは絶対無理ですけど、蝶野さんのための一夜限りの復帰ならお客さんも許してくれると思います」と、あっさり賛同した。
ともあれ、盟友の引退興行に見たものは、極上のエンターテインメントだったと蝶野は振り返る。「見せる側に徹した、武藤敬司らしい引退試合でしたよ。みんなが笑って会場を出られる、帰り道にいろいろな話ができる試合だったと思いますね」と絶賛する。
一方で「そこに闘魂の美学とか、頭にないよね。アントニオ猪木さんの教え? 受け継いでない。まったく流れてないと思う。興行は素晴らしかったよ。だけど、もし猪木さんが見たら、また高田(延彦)戦(1995年10月9日)みたいに怒られると思うよ」と笑いながら東京ドームを後にした。