武藤敬司(60)の付け人を務めた新日本プロレスの棚橋弘至(46)は、解説席からかつての師匠のラストマッチ(21日、東京ドーム)を見守った。
大会後に取材に応じ「武藤さんのプロレス頭にはかなわないですね。引退試合で2回負けるとか、前代未聞だよ…と思いながら。最後の最後まで武藤敬司を貫き通してくれた。あの独創性とか、後輩にマウントを取っていくところとか、武藤さんらしさ100%でしたね」と振り返った。
引退試合の相手を務めたい思いもあったが、指名を受けたのは後輩の内藤哲也だった。それでも終わってみればこれが「正解」だったという。「内藤でよかったと思いますよ。湿っぽくならないから。俺だったらエモくなっちゃうので。だって俺、2009年(1月4日東京ドームでの武藤とのIWGP戦)の入場だけで泣いてますから。前科があるのでね」と自嘲的な笑みを浮かべた。
武藤は引退試合で2度、代名詞だったムーンサルトプレスを放とうとコーナーに上がったが、葛藤の末に飛ばなかった。この印象的なシーンに大いに刺激を受けたという。
「現役中、たくさん打ってきたムーンサルトプレスを、今日に1本、持ってくることができなかったじゃないですか。毎日の試合を武藤さんが全力をやってきたからこそ、今日打てなかったというのを感じたんでね。だから明日以降、僕もちゅうちょなく飛び続けますよ。ハイフライ(フロー)に魂が入りましたね」
リングを去る姿を見て一つの目標も定まった。棚橋は「武藤さんより派手に去ることを誓います。そこでマウントをかましたいですね」と、自身にもいつの日か訪れる最後の時を、武藤以上の華やかさで迎えることを予告した。