右アキレス腱断裂という大ケガを負った男は、今を全力で駆け抜けている。ソフトバンク・上林誠知外野手(27)は今季、開幕スタメンで好スタートを切りながら、5月に選手生命を脅かしかねないショッキングなケガに見舞われた。一瞬にしてシーズンが幕を閉じ、競技復帰まで6か月。ここまで長く、精神的にもつらいリハビリを耐え抜いてきた。
「やれることは多くなかったけど、やれることをやってきた。体を大きくして、強い体をつくろうと思って、過去一番と言える体に徐々に仕上がってきた。来春の宮崎キャンプで『コイツ、相当やってきたな』と周りが思う準備を今後も続けていきたい」。発する言葉は前向きで、表情も明るい。
リハビリ中、反すうしてきた言葉がある。実業家の堀江貴文氏(50)が2015年、近畿大学の卒業式で行ったスピーチだった。
『未来のことを考えることに意味はない。過去を悔やんでいる暇はない。目先のことに集中すること。長期計画なんか関係ない。未来を恐れず、過去に執着せず、今を生きろ』
スピードが持ち味で、かねてトリプルスリー(打率3割、30本塁打、30盗塁以上)を狙える逸材と評価されてきた男にとって、アキレス腱断裂は重たい現実だった。周囲には見せないが、今後の野球人生への不安は当然ある。そんな境遇で「ホリエモンの言葉を見つけて、それがスッと入ってきて背中を押された」という。
「自分も、周りの人も、誰一人として未来のことなんか分からない。僕自身のことを言えば、現時点の(他者)評価としては外野の中で序列は下の方なんだろうと思う。でも、そのままそうなるとは思わない。みんなが思っている序列を覆すくらい、2月の宮崎キャンプからアピールすればいい。できるか、できないかはやってみないと分からないけど、今を一生懸命に駆け抜けたら自分はやれると思っている。だから、堀江さんの言葉は今の自分に響いた。今を集中して生きる。周りが見えなくないくらい、目の前のことだけに集中したい」
鷹の外野陣は群雄割拠だ。藤本監督は来季「レギュラー白紙」を強調して競争をテーマに掲げているが、柳田、牧原大の存在は抜けている。柳町や正木ら有望株、さらには出場機会を求める内野が本職の野村勇や増田らもいる。複数ポジションをこなすWBC日本代表候補の周東も臨戦態勢だ。さらに、球団は海外FA権を行使した日本ハム・近藤の獲得に本腰を入れている。
ここまで回復は順調で、近いうちに守備練習を再開するなど練習強度を上げていく予定だ。「春、宮崎で周りを慌てさせたい」。序列を覆す――。背伸びするわけでもない自然な言葉は、再起への予感を漂わせる。












