そら、間違いないよ――。15年ぶりに猛虎の監督に復帰した岡田彰布監督(64)が指揮を執る阪神で「ブーム再来」の予感がプンプン漂うパワーワードが「アレ」だ。

「アレ」とは岡田監督がオリックス監督時代の10年、交流戦優勝を視界に捉えたナインに余計な重圧をかけないようにとの配慮から使用を始めた「優勝」を示す隠語。以降、選手やメディアも巻き込み「優勝」を「アレ」を表現するようになり、見事に交流戦Vを達成。数ある〝岡田語〟の中でも、幸運を呼ぶフレーズとして知られている。

 当時の成功が指揮官の記憶にもあるのだろう。初日の訓示では自ら「優勝」の二文字を出したが、同時に「現実に17年も優勝していない。明日から『アレ』って言え」とナインにも直接、指示を出したほど。さらには日本シリーズでオリックス・杉本が試合前の声出しで「今日勝てばアレなんで」とやったり、ソフトバンクの一軍投手コーチに就任した斉藤和巳氏が会見で「今、はやりのアレを目指して…」と発するなど、その影響は自軍の枠を超え、球界のトレンドワードに発展した。

 岡田監督のカムバックにより火がついたこの第2次「アレ」ブームは、前回よりも〝長期化〟確実。〝起源〟であるオリックス時代の「アレ」はあくまで交流戦Vという期間限定モノだったが、今回は就任時から「アレ」を公言しており、そのため在阪局を中心にテレビ関係者も、来季の阪神戦の中継時は本腰を入れて「アレ」対応に追われることになるという。

「中には初めて『アレ』を耳にする人もいますから。そんな人は『アレ』って何? となりますよね。映像と音中心のテレビは、幾度も『アレ』を拾わないといけない。事前のインタビューなら新聞と同じでテロップ(表記)で対応できますが、中継では『アレ』の話題やワードが出た際には、アナウンサーが、その意味を補足でしゃべる必要性が出てきます。試合中に入るタイムリー談話などで『アレのために…』なんてコメントが入った時も同様。中継中、何度も『アレ』を説明することが必要になるかと…」とは在阪のテレビ局関係者の見立てだ。

 もっとも、来年の開幕以降も「アレ」の話題が増える展開になっていれば、それはそれでチームが順調に航海を進めているということ。少なくとも今年のように開幕から低迷し「アレレレレ…」となるよりはマシだ。「アレ」の頻度は今後も岡田阪神の〝安泰度〟を示すバロメーターになりそうだ。