音楽界きっての熱狂的なプロレスファンとして知られるのが「ファンキー・モンキー・ベイビーズ」のファンキー加藤(43)だ。少年時代からプロレス漫画とテレビ中継を見て育ち、1990年代には海外から凱旋帰国した武藤敬司(59=ノア)に魅了され、本格的にプロレスにのめり込んでいった。インタビュー前編では、来春でリングを去る武藤について語る。世間に衝撃を与えた引退発表に大の武藤フリークとして何を思うのか。そして、希望するプロレスリングマスターの“最終章”とは――。

 ――6月12日に武藤は来春までの引退を発表した。聞いた時の心境は

 ファンキー加藤 正直、あの日からずっと元気がないです。自分の中で武藤さんがいないプロレス界をまだ知らないので。プロレスが総合格闘技に押されて苦しい時に武藤さんは「プロレスはすごいよ。プロレスLOVEだよ」って言ってくれて、俺たちはプロレスを愛していていいんだな、誇りを持っていいんだなって思えた。ずっといろんな場面で救われたり楽しませてもらったりしたんで。引退は正直、まだ受け止めきれていない。

 ――なるほど

 加藤 でも、もう一方で股関節を今、痛めているとはいえ、ギリギリ歩ける状態で引退されるのはどこかホッとしている部分でもあって複雑ですね。共演させてもらった時に、武藤さんが1人で階段を上っているところを見たことあるんですけど、階段を上る速度が想像の3倍遅いんですよ。人知れずヒザの痛みと故障している部分と付き合っているっていうのは本当なんだなって。

 ――最後の対戦相手は誰が最適と考えるか

 加藤 まだ結論が出ていないんですよ。蝶野(正洋)さんと言いたいところなんですけど、今の武藤さん以上に体調がよくないじゃないですか。だけど、オカダ(カズチカ)選手ではないなと思っているんですよ。「プロレス総選挙」(テレビ朝日系)で立候補していましたし、天龍(源一郎)さんの引退試合も務めましたけど、武藤さんとオカダ選手には今のところストーリー性がないので。棚橋(弘至)選手とかは見たいですけどね。

 ――棚橋を選ぶ理由は

 加藤 もともと付け人をやっていたっていうのもありますし。対戦よりタッグで並び立つ姿を見たいかな。でも、そんなん見たら、ちょっと泣いちゃうかもしれないな…。棚橋選手も武藤さんと同じで、苦しかった時代のプロレスを救ってくれて、今のプロレスの礎みたいな人なので。その2人のタッグは俺、一番涙腺きちゃうかもしれないな。ヤバいな。想像しただけで泣きそうです。

 ――武藤からはどんな影響を

 加藤 歌に直接ではないけど、基本的に武藤さんの人生の年表と自分の実年齢を合わせながらずっと生きています。例えば、武藤さんが確か(プロレス大賞で4度目の)MVPを取ったのが46歳で、そこでもさらにピークを迎えていて。今、自分が43歳だから、3年後くらいになんかでっかい目標をかなえないとなとか。

 ――武藤の引退後もプロレスを見続けるのか

 加藤 素直な気持ちとしては、やっぱりちょっとだけ熱は冷めると思うんですよ。俺は武藤プロレスの申し子みたいなファンなので。だからといって、無理やり遠ざけることもなく、無理やり前のめりになることもなく、今まで通りナチュラルに応援していこうかなと思っているんです。そこで自分の心を大きく揺さぶってくるようなレスラーが現れるのか、成長してくるのかっていうのは楽しみです。なんか揺さぶられたいですね。

 ――期待の選手は

 加藤 ノアだったら清宮(海斗)選手ですね! 昨年末に武藤さんとお食事させていただく機会があって、あの武藤さんが「清宮はいいよ」って珍しく褒めていましたね。俺、あんまり武藤さんの口からそんなこと聞いたことないですけど。

 ――どうしたらノアが盛り上がるか

 加藤 最近、拳王選手とか清宮選手がユーチューブを始めていて、そういう試合以外のプロモーションとか「ちりも積もれば山となる」でしょうね。棚橋選手が休日を返上して全国の小さなラジオ局を回ったみたいに。それは音楽業界も一緒です。あと、今年の元日のノア日本武道館大会でテーマ曲を歌わせてもらったんですけど、結構うちのファンが来てくれて。実際、生でプロレスを見たら「こんなに迫力あるんだ。面白いんだ」って。きっかけづくりです。最初は「小さなことからコツコツと」ですね。

 ――自身のファンでプロレスファンが増えたとか

 加藤 一緒に楽しんでくれるっていうか。でも、俺のファンを辞めてプロレスファンになっちゃった人も結構いて。俺もうかうかしていられないなって(笑い)。プロレスに負けないように頑張ろうとは思いますよね。

☆ふぁんきーかとう 1978年12月18日生まれ。東京・八王子市出身。2004年に同市出身の3人組の音楽グループ「ファンキー・モンキー・ベイビーズ」を結成し06年にメジャーデビュー。ヒット曲「あとひとつ」はプロ野球楽天・田中将大投手の入場曲となり、NHK「紅白歌合戦」には4度出場。人気絶頂の13年に解散したが、ソロ活動を経て21年にモン吉との2人でグループ活動を再開。今年の元日に行われたノア日本武道館大会ではテーマソング「VOYAGE」を書き下ろした。