金メダルレスラーのWWE参戦で、全米が話題沸騰だ。WWEは東京五輪レスリング男子フリー125キロ級で金メダルを獲得したゲイブル・スティーブソン(21)と独占契約を結んだと発表。この契約はWWEとして史上初めてNIL契約(全米大学体育協会が学生アスリートに企業と契約をし報酬を得ることを認める)に基づくものとなり、ミネソタ大学の学生であるスティーブソンは、WWEスーパースターとNCAA王者としてレスリングも続ける〝二刀流〟に挑戦する。

 海外メディアやファンは総合格闘技の「UFC」か「ベラトール」と契約すると見ていたようで、金メダルレスラーのプロレス転身に驚きを持って受け止められた。さらにネット上では、1996年アトランタ五輪レスリングフリー100キロ級金メダルで98年にWWE入りしたカート・アングル(52)と比較する論調が目立った。

 これを受けて、スティーブソンは自身のツイッターを更新。「オレは次代のカート・アングルではない。オレはゲイブル・スティーブソンだ」と投稿し、アングルと比較されることに〝反論〟してみせた。さらに「さあ、ショーを楽しんでくれ、ありがとう」と記し、WWEでの成功に自信を見せた。
 
 とはいえ実際には、〝ネクスト・カート〟はかなりレベルの高い目標。アングルはプロレスファンに絶大な人気を誇ってきたからだ。五輪金メダリストとなると、とかく真面目で誠実なアスリート…と見られがちだが、アングルはあえてエリート意識むき出しの〝へなちょこキャラ〟に徹し続けた。入場には「You suck!(へなちょこ野郎!)」のチャントが沸き起こり、リング上で話し始めるとセンテンスごとに観衆は「What?(はぁ?)」の大合唱。ファンからイジられることで人気を得た、まれなレスラーだったのだ。

 その一方で、ゴングがなれば卓越したマットさばきを披露。レスリング仕込みのスープレックスや寝技だけではなく、金網の最上段からムーンサルトプレスを放つという離れ業までやってのけた。WWEではブロック・レスナー、クリス・ベノワ、エディ・ゲレロらとハイレベルな名勝負を繰り広げ、新日本プロレス、IGFと日本マットにも参戦して実力を証明。世界のプロレス史に残る名レスラーと言っても過言ではない存在だ。
 
 そんなアングルの〝次〟になることを否定したスティーブソンは、どんなスタイルでプロレスキャリアを積んでいくのか? 注目が集まる。