【取材の裏側 現場ノート】今年もどうやら絶好調だ。大日本プロレスのアブドーラ・小林(45)は2022年の好スタートを切った。

 今年の始動となった2日は、全日本、大日本の2大会(ともに東京・後楽園ホール大会)に参戦し、タッグ戦2連勝。「生涯初だろ。チームとしての2連勝というのがあるかもしれないけど、自らフォール勝ちでの2連勝は、(今年で)27年目に入るけど初だと思う」とご満悦だった。

 当初は、全日本の前3冠ヘビー級王者のジェイク・リーに挑戦する予定だった。しかし相手の負傷で実現せず。それでも興行に穴を空けないようにと伊東竜二、関本大介とともに全日本に〝男気参戦〟した形だ。「ファンへの最低限の礼儀」と話す小林の姿に、記者はあるシーンが頭をよぎった。

 昨年10月に行われた、〝邪道〟大仁田厚率いるFMW―Eの興行に出場した際、メインの電流爆破戦でトラブルに見舞われた。停電で爆破装置が機能不全となったのだ。本格的な爆破前のタイミングであり、まさかの事態に場内は騒然。復旧作業が長引き観客からは戸惑い、落胆の雰囲気が漂った。

 それを察して小林は暴れ回った。停電の中でも集まったファンのために大仁田とともにリングを駆け巡った。いつ復旧するか分からない状態。終わりが見えない戦いとなったがファンの不安をかき消そうと必死に行動し会場を大いに盛り上げたのだ。その後、無事に電気は復旧。観客は派手な電流爆破を堪能できたのだった。

 記者は「非常事態だったのに、素晴らしいですね」との言葉を送ると「これくらいじゃ動じないよ。26年、地べた這いずり回っているから」とサラリ。今年も十分楽しませてくれそうだ。

(プロレス担当・桂川智広)