東京女子プロレスで活躍する伊藤麻希(26)が、団体をさらなる高みに導く。

 王者・山下実優(26)とのプリンセス・オブ・プリンセス王座戦(9日、東京・大田区総合体育館)に向け「私がベルトを取ったら、いろいろな〝負け犬〟たちに希望を見せられる。自分のためにベルトを取りたいというより、大田区で夢を見せたいというのがモチベーション」と語った。

 高校時代から地元の福岡を拠点とするアイドルグループ「LinQ」で活動するも、ブレークすることなく握手会で列がゼロという日もあった。事実上アイドル活動は〝クビ〟となり、プロレスのリングに夢を求めた。だが、なかなか思うような結果を残せず、苦難の日々が続いた。

 風向きが変わったのは今春だ。3月に米AEWにサプライズ参戦し、海外ファンの間に「マキ・イトウ」の名が一気に広まった。さらに今夏の「東京プリンセスカップ」では顔面を骨折しながらも戦い抜き、悲願の初優勝。これが追い風になると強調する。ファンからも「今の伊藤麻希なら負けないだろう」という声が届き「自分なら応えられると思ってる。今は自分を疑ってないですね」と自信をみなぎらせた。

 初戴冠への気持ちも高まってきた。「あれを巻くことでプレッシャーや負担が大きくなることは分かってる。でも、巻くことで見える景色が見たいんです。せっかくプロレスラーになったなら、見たことがない景色を見に行ってもいいじゃんって」と目を輝かせる。

 もちろんベルトが最終目標ではない。伊藤には、しっかりと見据える未来がある。「私は所属じゃなくてフリーなので『東京女子に愛がない』みたいに思われるけど、私は団体を有名にしたいんです。それが伊藤の愛の形です。ベルトがその切符になる。東京ドームに行けたら最高だと思っていて、その過程で両国国技館とか日本武道館とか段階的に踏んでいかないといけないと思うから、小さな目標からかなえていきたい。自分ならできる」

 決戦当日は新日本プロレス「G1クライマックス」の開催期間中で、同じ女子団体の「スターダム」が大阪城ホールでビッグマッチを開催する。それでも「私はプロレス界で一番目立ちたいから、どこにも負ける気はないです!」ときっぱり。かつて女子プロの〝聖地〟と呼ばれた大田区から、伊藤麻希のシンデレラストーリーが幕開けする。