主役は小柄な男だった。東京五輪悲願の金メダル獲得を目指す野球日本代表・侍ジャパンが2日、決勝トーナメント・準々決勝の米国戦(横浜)に延長10回、タイブレークの末に7―6のサヨナラ勝ち。最後は甲斐拓也捕手(28=ソフトバンク)が右越えに劇打を放ち、チームを準決勝進出に導いた。

 無死一、二塁から始まる延長10回のタイブレーク。米国の攻撃を栗林(広島)が無失点に封じて勝機をたぐり寄せた。リードしたのは9回からマスクをかぶった甲斐。鯉のルーキー守護神を落ち着かせ零封に導いた。「栗林がゼロに抑えたことが、この勝利につながった」。捕手らしく殊勲の右腕をたたえた。

 その裏、代打で今大会初出場の栗原(ソフトバンク)が初球で犠打を決めて一死二、三塁。大仕事をやってのけた後輩のお膳立てを受けて、最後は甲斐が右翼フェンス直撃の一打で、死闘に終止符を打った。「頭を整理してから打席に入った。外野手が1人内野に来てという状況だったので、初球からしっかりと打とうと思っていた」。攻守で抜群の存在感を放ち、文句なしのヒーローになった。

 一塁ベースを回り、手荒い祝福を受けた甲斐。予選ラウンドから活躍が目立つ。170センチの小柄な男が、大きな存在感を放っている。