果たして、このメンバーで大丈夫なのか。東京五輪に参加する野球日本代表・侍ジャパンの代表内定24選手が16日、都内のホテルで発表された。会見に出席した稲葉篤紀監督(48)は「東京五輪で金メダルを獲得する最適なメンバーを検討した結果」と胸を張ったが、ツッコミどころが多い感はどうしても否めない。現状で明らかに調子を落としている選手や、低迷中の広島から12球団最多となる5人が選出されるなど〝不可解選考〟に球界から疑問と不安の声が噴出している。

 一言一句に力がこもった。会見場に姿を見せた稲葉監督は冒頭のあいさつで「プレミア12で戦った選手を土台としているが、選手のケガの状態や(プレミアから)この1年半で台頭してきた新しい戦力など、あらゆる状況を踏まえた。通常の国際大会から、より少ない24人の選手枠というルールの中、コーチ陣とともに東京オリンピックで金メダルを獲得する最適なメンバーを検討した結果」と選考理由について述べ、自ら〝24人の侍〟たちの名前を読み上げた。

 さすがの侍指揮官も緊張していたからなのか。一人ずつモニターに内定選手が映し出されると同時に稲葉監督がそれぞれの名前と寸評を読み上げていたが、投手11人を終えたところで捕手2人を言い忘れ、内野手の発表を始めてしまうハプニングも発生。途中で司会者から間違いを指摘されると「捕手行きます。ごめんなさい!」と修正し、あらためてソフトバンク・甲斐と広島・会沢の選出を発表し直す一幕も見られた。

 ややドタバタなムードが漂った会見の中、この場で発表された肝心のメンバーについても疑問符が投げかけられた。質疑応答では「今の状態がベストとは思われない選手も含まれているが」との質問も向けられ、指揮官は「東京オリンピック本番で勝つためにこのメンバー、選手たちの状態を熟慮した。最適な組み合わせだと私は思っている。まだ1か月ある。今、正直状態はそんなに良くない選手もこの1か月で状態を上げてくれると信じている」と強調。そして「これまで私が監督となって選手の姿を見てきた中で、この選手とこのオリンピックで戦いたいという、強い思いを持つ選手たち。そこは信じてオリンピックを戦っていきたい」と続けた。

 確かにざっと見渡す限り、投手では菅野(巨人)が安定感を欠き苦しい投球を強いられており、田中将(楽天)も8年ぶりの国内復帰となった今季はここまで2勝4敗と黒星先行。昨季沢村賞に輝いた大野雄(中日)も今季の開幕投手を体調面から回避し、一軍合流後の現在3勝4敗、防御率3・49とまだまだ本調子とは言い難い。昨季の絶不調で守護神からリリーフに回り、今季はセットアッパーとして復活の兆しを見せている山崎(DeNA)についても一部から「絶頂時の70%」と評される厳しい声があるのも事実だ。

 野手も山田(ヤクルト)、近藤(日本ハム)、そして鈴木誠(広島)らは今の成績と照らし合わせれば、お世辞にも「ベスト」とは言えないだろう。

「彼ら(不調の内定選手)に対して稲葉監督は『1か月で状態を上げてくれる』とエールを送っているが、それは逆にプレッシャーになってしまう可能性も十分ある。あの言葉はとらえ方次第では『1か月で状態を上げてくれ』とハッパをかけているようなもので、当人たちにはかなり重くのしかかってしまうかもしれない」(球界関係者)

 また、この日は交流戦最下位に沈むなど大低迷中の広島から12球団最多の5選手が選出されたことにも〝焦点〟が当てられた。実際に会見では「なぜ広島から5人も?」との質問も上がり、稲葉監督は「チーム状況というのもあるが、選手個々の能力というものを見て今回5人というメンバーになった」と説明。15日の試合で会沢が負傷したことに関しては「翼に関しては昨日、足を痛めたようなので、球団、関係者からの報告を待っている最中。今後どうするかというのは決めたい」と話し、慎重な言葉に終始した。「捕手としては栗原、近藤もいるという考え方でいる」とも述べていることから有事の際の〝スーパーユーティリティー起用〟も視野に入れている模様だが、いずれにせよ指揮官がいまだかなり苦悩している様子がうかがえる。

 本大会で「敵」となる米国のMLB関係者からは「好調阪神で扇の要となっている梅野を選んでおくだけでも、この悩みと疑問点は解決できていたはず。とにかく謎だらけとしか言えない。どうしても大目標の金メダルは大丈夫なのかと相手ながらに疑問を抱いてしまう」との指摘もあった。

 諸々の観点から逆風が吹きつける格好となってしまった侍ジャパン。それでも「金メダルを取れるメンバー」と何度も力説した稲葉監督の言葉を信じ、侍ジャパンの面々はマイナスをプラスに変えて一致団結するしかない。