【柏原純一「烈眼」】3打席無安打に終わったとはいえ、7日の阪神戦(甲子園)では、ヤクルト・村上宗隆の22歳とは思えぬ風格に改めて驚かされた。
前日に52号本塁打を放ち、打点、打率ともにリーグトップ。本塁打の日本記録更新とともに「令和初の3冠王」誕生なるかも、残り試合の見どころのひとつだ。
「どんな精神状態で打席に臨んでいるのか?」という点を気にしながら見ていたが「ただ者ではない」と思うシーンが大敗の試合でも見てとれた。
4回裏に大量6点を奪われ、迎えた直後の5回表、先頭で迎えた第2打席だ。阪神先発・伊藤将に対し、遊飛に終わった第1打席は3球を投じた緩いカーブを中心に6球中、5球が変化球。そんな伏線もあり、村上は追い込まれるまでは、変化球にタイミングを合わせていたように見えた。
結果的には前の打席とは一転、直球系のボールで追い込まれ、カウント2―2から〝裏〟をかかれる形でカーブで見逃し三振に打ち取られたのだが「さすが、3冠王を狙えるだけの打者」と感心させられたのが、初球の直球、2球目の体の近くに来たカットボールを悠然と見送ったところ。打ち気にはやる姿がまったくないのだ。
第2打席に注目した理由は試合展開にある。この場面は多くの打者が打撃自体が雑になりがちで、打者心理からすると、打つ前から、かなりのフラストレーションをため込んだ状態での打席でもあったからだ。
直前の4回裏に投手陣が大炎上。30分以上、守備に神経を割いた揚げ句、再び打席へと気持ちを向けなければならなかった。これは、どんな野手でも嫌なものだ。
だが、村上は泰然自若のまま。今季、打撃の確実性が大きく飛躍したゆえんは、こんなところにもあるのだろう。
私が現役時代、日本ハムでプレーしていたころ、ロッテには3冠王を3度獲得した落合博満がいた。一日4打席立つ日々で、落合は無安打で迎えた4打席目に四球をもらうと「どうも、ありがとうございます」とニコニコしながら、一塁を守る私のところにきた。
「お前、一日ノーヒットで終わるのに、今の打席、打ちたいとか思わなかったの?」と私が聞くと「何言ってるんですか先輩! フォアボール、大歓迎ですよ。ヒットは打とうと思えば、いつでも打てますから」と返してきて、やはり「コイツはすげぇな」と思ったものだ。
2人に通じるのは、あくまで、自分から崩れていかない点だ。打ちたいからといって、自分から球を追いかけない。試合展開に流されることなく、どの打席でも同じテンションで打席で臨むことができる。逆を言えば、打撃は些細なことから崩れる〝生モノ〟であることを肌身で知っているからこそ、これを貫けるのだろう。当時の落合の小憎らしいほどの言葉の真意も、そんなところにあると思う。
そんな境地に22歳の村上は到達しているように見えた。令和初の3冠王を狙うにふさわしい〝特別な〟打者であることを改めて感じさせられた。
(野球評論家)












