広島・森下暢仁投手(23)がセ・リーグ新人王を受賞した。1年目ながら先発ローテの一角としてフル回転し、10勝3敗、防御率1・91と驚異の数字をマーク。今季は5位に沈むチームの中で希望の光となったが、その活躍によって指揮官の〝眼力〟を証明することにもなった。

 最終的には313票中303票と断トツの得票率。最後までタイトル争いを繰り広げた巨人・戸郷に大きく差をつけての受賞だった。念願の新人王を手にした右腕は「入ったときから取りたい賞だったので本当にうれしい。『やった!』という気持ちです」と喜びを爆発させた。

 1年目の今季はコロナ禍によって開幕延期という不測の事態に見舞われた。ただ、先輩ナインすら調整に苦しむなか前向き思考を発揮し「チームメートや首脳陣の方とコミュニケーションを取る時間ができた。それでスムーズにシーズンに入ることができた」とプラスに転換。特にシーズン佳境となった10、11月は5戦4勝、防御率0・24と圧巻のラストスパートで新人王を確実にした。

 早々に優勝争いから脱落したチームにとって森下の快進撃は数少ない希望の光となっていたが、同時に佐々岡真司監督(53)も〝救う〟ことにもなった。昨年のドラフトでは4球団が競合した佐々木朗希投手(19=ロッテ)などの指名も検討されていた。しかし、就任1年目の指揮官が「森下でいきましょう!」と強行に主張。球団側もあまりの剣幕にその言葉を信じて単独指名に踏み切ったのだった。

 さらに、佐々岡監督は自らが背負っていたエースナンバーの背番号18まで譲渡。そうした経緯があるだけに「結果を残せていなかったら『一体何だったんだ』となっていたかもしれない。少なくとも選手獲得における監督の発言権は弱くなっていただろう」(球団関係者)と森下の成否が指揮官の〝信用問題〟に発展する可能性もあった。

 しかし、フタを開けてみれば想像以上の活躍によって佐々岡監督の投手のポテンシャルを見抜く目が確かであることが証明された。「今年以上の成績を残せるようにしっかりやっていきたい。たくさん経験を積ませてもらった。来季もいろいろなことに取り組んでまた成長していきたい」という森下。これからも〝孝行息子〟として佐々岡カープを支えるつもりだ。