ソフトバンクの田中正義投手(26)が7日の三軍交流試合・徳島インディゴソックス戦(タマスタ筑後)に先発した。今春に右ヒジ痛を発症し、長いリハビリを経て、この日が今季初の実戦登板。1回を1安打無失点、最速は154キロだった。「誰がどう見ても遅すぎると思いますが、時間は取り戻せない。前を向いて投げていきたい」と話した。

 2016年のドラフト5球団競合右腕は、4年目の今もプロ未勝利。1年目は故障に泣き、2年目以降は焦りから精神的にも追い込まれ、不振と故障を繰り返した。悪循環を断ち切れず「ドラ1の重責」に苦しむ姿に球団内からは「必死に壁を打ち破ろうとする人間ほど、次から次に試練が待っている。気の毒で、かける言葉もない」との声が上がるほどだった。

 世間の「なぜダメなのか?」との問いかけに、首をひねる関係者は多い。覚醒のヒントは一つ。同じリハビリ組だったサファテは米帰国前に田中に特別なメッセージを送ったという。

「君は本当にすごいものを持っているんだ。セイギ、あとは自信だけだぞ」

 この日の投球を見守った藤本三軍監督も「人間は吹っ切れた時に強くなれる。表情が変わった。正義は投げて投げて自信をつけたら、とんでもない投手になる。あんな素材、どこ探してもおらんやろ」と、サファテに同調するように言った。

 この日の登板後「今のモチベーションは、気にかけてくださる方々に言葉や姿勢だけじゃなく“結果”でお礼をすること」と言った田中。今、舞台は関係ない。次も「前を向いて投げるだけ」だ。