二刀流を支えてきた〝放任主義〟は限界なのか――。首や左ヒザ、右上腕二頭筋に不安を抱え、負傷者リスト(IL)入りしているドジャース・大谷翔平投手(32)を巡り、球団の管理姿勢が問われている。米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」傘下の「ジ・アスレチック」は16日(日本時間17日)の記事内で本人の強い意思を尊重する一方、球団も「NO」を言いにくい関係にあると指摘。二刀流を続けるためにも、大谷任せからの転換が迫られそうだ。

 同サイトの指摘から浮かび上がるのは、大谷が投手を続けるか否かという単純な二者択一ではない。球団が本人の意思を最大限尊重してきた結果「『NO』を言いにくい関係になっていないか」という、より根深い問題だ。

 大谷は今季、先発14試合で防御率1・79、9回あたり10奪三振。登板の合間には打者として1番を務めながら結果を残しており、同記事を執筆したアンディ・マッカロー記者は「世界最高の投手かもしれない」と最大級に評価した。

 一方で32歳となった今、フルシーズンを二刀流で完走する負担は27歳の頃よりはるかに重いとも指摘。現在は首、左ヒザ、右上腕二頭筋など体の各所に不安を抱えている。満身創痍とも言える状態について、同記者は「球団内の誰も満足していない」とも記している。

 そこで問われるのが、ドジャースの〝放任主義〟だ。もちろん球団が文字通り、大谷を「放置」してきたわけではない。しかしながらマッカロー記者は大谷自身に強い「主体性」があり、シーズンを通して二刀流でプレーする夢を簡単には諦めないだろうと分析。その一方で、ドジャースも「球団の顔」である大谷ともめたくないはずだとして、この問題が極めてデリケートになるとみている。

 本人の希望を最大限尊重する姿勢は、裏返せば大谷に「NO」を突きつけない〝放任型〟にもなり得る。今回の負傷をその姿勢だけのせいと断定することはできないが、少なくとも体の各所に不調を抱えるまで負担の蓄積を止め切れなかった現状は重い。大谷ほど自己管理能力の高い選手でも、前例のない二刀流を続ける以上、本人任せだけでは限界があるという見方も成り立つ。

 マッカロー記者は一つの妥協案としてシーズン前半は打者としてプレーし、後半から投球に向けて肩をつくり、10月の登板に照準を合わせるプランを提示した。年間を通じて二刀流を貫く従来型から、勝負どころに合わせて「投手・大谷」を温存する発想への転換だ。

 ただ、それを実行するには大谷本人の理解が欠かせない。大谷は2025年のポストシーズン中、二刀流について「それが僕の本質だからだ」と語るなど、キャリアを通じてそのスタイルを貫く強い意志を示してきた。マッカロー記者も「今後、打撃に専念する道を選べば驚きだ」とし、再び登板するとみている。

 だからこそ、ドジャースに求められるのは「投手・大谷」を封印することではない。登板時期、投球量、休養まで球団側がこれまで以上に主導し、時には本人の希望に「NO」を突きつけることだろう。大谷の意思を最大限尊重する〝放任主義〟から、二刀流を長く守るための徹底した負荷管理へ――。今回のIL入りは、大谷だけでなく王者ドジャースにも変化を迫る大きな分岐点となりそうだ。