キングの席が空いた瞬間、待ちわびた「金の卵」に扉が開いた。ドジャースは9日(日本時間10日)のレッズ戦後、右上腕二頭筋の違和感などを抱える大谷翔平投手(32)を15日間の負傷者リスト(IL)に入れ、代わって2Aタルサのホスエ・デポーラ外野手(21)を昇格させると発表した。3Aを飛び越えての異例の抜てきだ。
異例なのは、その昇格ルートだ。デポーラは3Aを一度も経験していない。アンドリュー・フリードマン編成本部長の体制下で、2Aから直接メジャーへ昇格する野手は初めて。米メディア「ベースボール・ナウ」も「前例のない動き」と報じた。11日(同12日)の敵地マーリンズ戦でメジャーデビューする予定で、大谷の離脱という非常事態が21歳に千載一遇の舞台を用意した。
抜てきは勢いだけではない。デポーラは今季2Aタルサで124試合に出場し、打率3割3厘、27本塁打、104打点、37二塁打、31盗塁、OPS0・948。81四球に対して三振は87と、長打力だけでなく選球眼も際立つ。MLB公式の有望株ランキングではドジャース傘下1位、全体6位。2025年にはオールスター・フューチャーズゲームのMVPにも輝いた、まさに球団が手塩にかけて育ててきた「金の卵」だ。
その価値は今夏の補強でもはっきり示された。ドジャースはトレード期限前、タイガースからタリク・スクバルを獲得する大型取引で上位有望株を複数放出したが、デポーラは手元に残した。期限前からMLB公式に「限りなく放出不可能に近い」と評されていた逸材で、目先の戦力補強より将来の主軸候補を守った形だ。
ロバーツ監督も「球速にひるまず、ストライクゾーンをコントロールできる」と打撃を高く評価。大谷が離れている間は多くの打席を与える方針を示している。春先にデポーラ自身も「目標は完全な選手になり、最高の一人になること」と大きな野心を口にしていた。その若武者に待ち望んだ舞台が突然巡ってきた。
もちろん、いきなり大谷を超えるという話ではない。それでも不動の存在が抜けた間に、若きトッププロスペクトが強烈なインパクトを残せば、「アップステージ・オオタニ(大谷食い)」を印象付ける展開も絵空事ではなくなる。
これまで誰にも譲る必要のなかった場所に、近未来の主役候補が割って入る。大谷が治療に専念している間、球団が守り抜いた21歳がどこまで存在感を膨らませるのか。思わぬ離脱が、スーパースターに初めて「追われる側」の景色を見せることになるかもしれない。












