東海岸から西海岸へ、また厄介な火種が飛んできた。今夏のトレード期限前にタイガースからドジャースへ電撃加入したタリク・スクバル投手(29)を巡り、ニューヨーク発の〝酷使疑惑〟が波紋を広げている。

 米メディア「ファンサイデッド」運営のドジャース専門サイト「ドジャース・ウェイ」は8月31日(日本時間9月1日)、ニューヨークのスポーツラジオ局「WFAN」の番組でパーソナリティーのエバン・ロバーツ氏(43)が展開した主張を問題視した。

 24日(同25日)の同局番組内で同氏は、今オフにFAとなるスクバルについて、ドジャースのアンドリュー・フリードマン編成本部長がデーブ・ロバーツ監督に対し、来季以降は残らないことを前提に「使い倒す」よう指示しているとの趣旨を展開。だが後に「これは報道ではなく、私の意見だ」と明確にしており、内部情報に基づくスクープではなかった。

 それでも疑念が生まれた背景はある。スクバルは16日(同17日)のブルワーズ戦でキャリア最多109球、22日(同23日)のパイレーツ戦でも106球を投げた。5月に左ヒジの処置を受けた投手だけに、連続の100球超えを「異例」と見る向きが出ても不思議ではない。

 一方で、これを「酷使」と断定するには数字が余りにも弱い。ドジャース移籍後は28日(同29日)の古巣タイガース戦まで5試合に先発して計30回。1試合平均は6回で、タイガース在籍時の今季16先発96回2/3とほぼ同じ。昨季も31先発で195回1/3を投げており、イニング数だけならむしろ「通常運転」の範囲だ。

 だからこそドジャース・ウェイは、エバン・ロバーツ氏の指摘について「球団内部に通じる情報筋ではない」として「SNS上の切り取り情報をうのみにしないように」と警鐘も鳴らした。ロサンゼルスから約3000マイル離れたニューヨークのラジオ番組が「球団の長期構想を先取りするのは、まず考えられない」との論法だ。

 問題はここからだ。ニューヨークとロサンゼルスは、ヤンキース―ドジャースのワールドシリーズなどを通じて古くから対抗意識を燃やしてきた。しかもエバン・ロバーツ氏は熱烈なメッツファンとして知られ、スクバルの次なる移籍先にメッツを推す見立ても示している。発言がSNSで増幅されれば、LA側で「東海岸がスクバルを引き離そうとしている」といった〝陰謀説〟に化ける危うさもある。

 現段階で確認できるのは、FA流出を前提に球団が意図的に酷使している事実など一切なく、強烈な主張が一人歩きしていることだけだ。スクバルの左腕以上に熱を帯び始めた東西の舌戦。今オフのFA市場が開く前から、すでに場外戦のゴングは鳴っている。