10月の足音が近づくにつれ、海の向こうでは〝大舞台の主役〟を巡る話題も熱を帯び始めた。米スポーツ専門局「ESPN」は人気番組「SportsCenter」で、元祖「ミスター・オクトーバー」として知られる元ヤンキース外野手のレジー・ジャクソン氏(80)を特集。球史に残る「10月男」の功績があらためて振り返られたことを機に、球界ではドジャース・大谷翔平投手(32)を〝ネオ・ミスター・オクトーバー〟の最有力候補に推す声が高まっている。

 10月の主役を決めるのは、シーズンの数字だけではない。土壇場で歴史を動かす一打。それこそが「ミスター・オクトーバー」の条件となる。一方、ドジャースはナ・リーグ西地区で首位を快走し、地区優勝へ独走態勢。ポストシーズン進出もほぼ確実となる状況下だからこそ、早くも海の向こうでは〝短期決戦の顔〟を占う声が飛び交い始めている。

「オールド・タイマーズ・デー」の試合前に紹介されるヤンキースのレジェンド、レジー・ジャクソン氏(ロイター)
「オールド・タイマーズ・デー」の試合前に紹介されるヤンキースのレジェンド、レジー・ジャクソン氏(ロイター)

 ESPNが同番組内で焦点を当てたジャクソン氏は、今年5月に満80歳を迎えたMLBのレジェンドだ。1977年10月18日(現地時間)、ヤンキースの一員としてドジャースと対戦したワールドシリーズ第6戦。本拠地ヤンキー・スタジアムで、異なる3投手から3打席連続で初球を本塁打にし、8―4の勝利で対戦成績を4勝2敗として15年ぶりの世界一を決めた。この伝説的な一夜によって「ミスター・オクトーバー」の異名を決定的なものにした。

 同番組はアンカーが「今年のポストシーズンでは、誰かがMLB史にインパクトを残し〝ネオ・ミスター・オクトーバー〟として語り継がれるかもしれない」との趣旨で締めた。この余韻を追うように、MLB内では大谷を最有力視する見方が目立ち始めている。

 実際、ポストシーズン進出を狙うライバル球団の警戒感も強い。スカウティングを専門とするア・リーグ球団関係者の1人は「ポストシーズンで最も警戒しなければならないのは、やはりドジャースの大谷。彼は大舞台に強く、勝負強い。投手としても復帰が秒読みになり、例年に比べればややスローペースな印象がある打撃に関しても、全ては10月を見越して状態を上げていこうとしているように見受けられる」と分析している。

 その見立てには、実績という裏付けもある。ドジャース移籍1年目の24年に初めてポストシーズンを経験すると、パドレスとの地区シリーズ第1戦(現地時間10月5日、ドジャー・スタジアム)でいきなり同点3ラン。16試合で3本塁打、10打点を記録して世界一に貢献した。

 翌25年は17試合で打率2割6分5厘、8本塁打、14打点、OPS1・096。ブルワーズとのナ・リーグ優勝決定シリーズ第4戦(現地時間10月17日、ドジャー・スタジアム)では、投げて6回無失点10奪三振、打って3本塁打という常識外れの「二刀流インパクト」でシリーズMVPを獲得した。投手でも同ポストシーズン4試合に先発して2勝。2年間通算は33試合で11本塁打、24打点、OPS0・940に達する。

 今季も26日(日本時間27日)時点で30本塁打をマークし、投手では14試合で8勝2敗、防御率1・79。左ヒザの炎症で7月3日(同4日)を最後にマウンドから遠ざかるが、28日(同29日)にブルペン投球を行う予定で9月上旬の復帰が視野に入る。二刀流の〝完全体〟で10月を迎える可能性は高まりつつある。

 ジャクソン氏ほど「ミスター・オクトーバー」が定着した後継者は、長く現れていない。大谷が投打で10月を支配し、ドジャースを1998~2000年のヤンキース以来となるワールドシリーズ3連覇へ導けば、称号は一気に現実味を帯びる。

 かつてジャクソン氏がドジャースを沈めて生まれた異名が、約半世紀を経てドジャーブルーの背番号17によって塗り替えられる。そんな皮肉で壮大な10月が現実になれば「ネオ」の冠に異論を挟む者は、もはやいないだろう。