たかが1勝、されど今のドジャースには〝空気を変える1勝〟だったということか。ドジャースは10日(日本時間11日)、本拠地ドジャースタジアムでロイヤルズに6―5で競り勝った。これで71勝48敗。ナ・リーグ西地区首位を守り、2位ダイヤモンドバックスに7・5ゲーム差をつけているとはいえ、直近10戦は2勝8敗。3カード連続で負け越し、一時の圧倒的な勢いは影を潜めていた。

 そんな中で、米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」傘下のスポーツ専門サイト「ジ・アスレチックス」が注目したのは、白星そのもの以上にチーム内に生まれた〝切迫感〟だった。

 デーブ・ロバーツ監督(54)は試合前「我々は今、ワイルドカードチームだ」と厳しい言葉を投げかけ「『大丈夫、問題ない』という考え方では十分ではない」と危機感をあらわにした。その姿勢は采配にも表れた。

1点を追う6回二死二、三塁。不振のテオスカー・ヘルナンデスに代え、休養予定だったタッカーを代打へ。タッカーが四球を選ぶと、マンシーが走者一掃の3点二塁打を放ち、ベンチは沸騰した。「選手たちに切迫感を求めるなら、それに応じて采配を振るう」と指揮官。もはや実績や感情ではなく、勝利を最優先するモードへ切り替えた。7回に追いつかれても、今度は大谷翔平投手(32)が安打で出塁し、二盗。フリーマンの適時打で決勝のホームを踏んだ。9回は直前2試合でセーブに失敗していたディアスが3者凡退。12球で締め、グラブを何度もたたいて雄たけびを上げた。

 本拠地初登板だったスクバルが5回3失点と本調子ではない中でも、打線、走塁、救援陣、そして采配が一つになって勝ち切った。ロバーツ監督は「もっと頑張るということじゃない。ただ、集中力をさらに高めるということだ」と強調し、「今日は良いスタートを切れた」と語った。

 フリーマンも「このクラブハウスからパニックが起こることはない」と言う。焦る必要はない。だが、のんびり構える時間も終わった。薄氷の6―5がただの1勝で終わらず、眠っていた王者を再点火させる号砲となるか。少なくとも、そのスイッチは本拠地で確かに押された。