球界を揺らした〝ゾンビたばこ〟騒動の余波は、昨季の首位打者にまで及んだ。広島は1日、小園海斗内野手(26)、矢野雅哉内野手(27)、前川誠太内野手(23)、田村俊介外野手(23)に来季の契約を結ばないと通告したことを発表した。球団が「信頼関係」を理由に20代の4選手を一斉に戦力外とする異例の決断を下し、焦点は早くも〝次の居場所〟へ移っている。
異例の大量戦力外で、今後の動向が最も注目されるのはやはり小園だ。2025年に打率3割9厘でセ・リーグ首位打者となり、今春のWBCでは侍ジャパンにも選出された。26歳という年齢を考えれば、本来なら自由契約となった瞬間から複数球団が獲得へ動いても不思議ではない。
しかし単純な戦力外とは事情が違う。過去にも醜聞やチーム内の暴力問題を抱えた選手が別球団で再出発した例は確かにあるが、今回は球団が「信頼関係」そのものを理由に複数選手との契約を一斉に見送ったケースで事情はまるで異なる。それらの例を引き合いに出して移籍先を推測するのは、あまりに短絡的だ。こうした球団側の厳しい姿勢が、小園の再スタートに重くのしかかる。
その背景にあるのが、指定薬物エトミデート、通称「ゾンビたばこ」を巡る問題だ。矢野と前川は7月に広島県警の家宅捜索を受け、9月25日付で医薬品医療機器法違反容疑で書類送検された。一方、小園と田村について同様の書類送検は公表されておらず、球団も4選手のエトミデート使用を確認したわけではないとしている。
ただ、小園、矢野、田村については7月、問題の関係者と同席する写真が一部週刊誌で掲載された。球団は半年以上にわたる調査を踏まえ、違反行為を認定した処分ではなく、来季へ向けて信頼関係を築くことが難しいとの判断から4人を戦力外とした。
小園を報徳学園時代から深く知り、MLB球団にも在籍経験のある球界OBは「NPBの11球団も、MLBも手を出しにくいだろう」と厳しい見方を示し、こう言い切る。
「今はコンプライアンスが厳しい時代。能力が高いからといって、広島が信頼関係を理由に来季契約を見送った直後に動けば、獲得しようとする側は球団外の各方面から猛反発を招くリスクがある。広島側が『信頼関係を築くのが難しい』と判断した事実は、それだけ重い」
その上で「しかも小園は白黒がついたわけではなく、いわば『グレー』な状態にある。それが逆に、他球団にとって最も手を出しにくい材料になる」と続ける。
同OBによれば、獲得を検討する球団は戦力評価だけでなく、親会社やスポンサーへの説明、ファンの反応、球団イメージへの影響まで考えざるを得ないという。
MLBについても同OBは「厳しい」とみる。性的暴行疑惑を巡る処分が復帰の足かせとなったトレバー・バウアー投手(35)が、MLB復帰を望みながら契約に至らず、2度にわたるDeNAとの契約を経て現在もメキシコシティ・レッドデビルズに所属する例を挙げ「こうしたリスクには、MLBもNPB以上に敏感だ。実力だけでは動かない」と指摘する。
そこで再起の場として挙げるのがメキシカンリーグだ。前出のバウアー含め日本や米国で所属先を失った選手が再出発の場を求めた例もあり、まず海外で野球を続けながら、時間をかけて信用を取り戻していく道が考えられる。「まず海外で野球を続け、プレーと行動で信頼を取り戻す。その先にNPBやMLB復帰の可能性を探るしかない。それも難しければ、腹をくくって引退という選択肢も出てくる」
昨季の首位打者が、わずか1年後に〝どこで野球を続けられるのか〟を問われる秋――。小園の再起は打率や守備力では測れない、「信頼」という最も重い数字なき成績に左右されることになりそうだ。












