〝最強左腕〟にも、マウンドへ向かう足を重くする緊張があった。ドジャースは10日(日本時間11日)、本拠地ドジャースタジアムでロイヤルズに6―5で競り勝った。今夏のトレードでタイガースから加入したタリク・スクバル投手(29)は、移籍後初となる本拠地登板で5回95球を投げ、4安打3失点、6奪三振、2四球。勝敗は付かなかった。

 ただ試合後の主役は数字以上に、その口からこぼれた「緊張」への率直な思いだった。MLB公式サイト「MLB.com」が同日に配信した試合後のインタビューで、2年連続サイ・ヤング賞左腕は本拠地デビューについて「緊張していなかったと言えばウソになる。緊張はいいことだと思う」と告白した。

 先発メンバー紹介から大歓声を浴び、5万1799人が詰めかけたスタンドからは「スクーーー!」の声も飛んだ。今夏最大級のトレードで加わったエースを迎える熱気は、新天地で初めて本拠地のマウンドに立つ左腕にも強く届いていた。

 そして続けた言葉が印象深い。「登板する日に緊張を感じなくなったら、おそらくそれが引退する時だ。緊張するということは、それだけ自分が大切に思っているということだから」。数々の大舞台を経験してきたエースにとっても、ドジャーブルーで初めて立つ本拠地のマウンドは別物だった。

「今回は自分にとって特別だったから、いつもより少し緊張が強かった。でも、それは気持ちが入っている証拠。ドジャースファンの前で投げることに興奮していたし、本当に楽しかった」と振り返った。

 一方で自己評価は甘くない。スクバルは「少しボールが散ってしまった。特に速球のコマンド(制球)では、自分にとって珍しいこと」と課題を認めた。それでも「しっかり競争できたし、チームに勝つチャンスを与えられたと思う」と胸を張った。

 さらに「打線が大きく助けてくれた。守備にも助けられたし、ブルペンも素晴らしかった」と仲間への感謝を並べ、「総じていいチームの勝利だった。特に自分が求める基準まで投げられなかった中でね」と強調した。

 完璧ではない初陣を、言い訳ではなく自省と感謝で包んだスクバル。華々しい本拠地デビューよりも、「緊張するほど、この舞台を大切にしている」という告白の方が、ドジャースが獲得した左腕の素顔を鮮明に写していた。