金満批判の炎に、また大量の「油」が注がれた。それでも、この補強でMLBの〝労使決戦〟の筋書きが変わるわけではないという。米経済誌「フォーブス」電子版は4日(日本時間5日)、ドジャースがトレード期限直前にタイガースからタリク・スクバル投手(29)を獲得するトレードで合意したことと、次期労使交渉への影響を分析した。ア・リーグのサイ・ヤング賞に2度輝いた左腕まで加わったが、同誌は交渉の構図を変えることはないとみている。

 最大の理由は、対立軸が移籍以前から固まっているためだ。現行の基本協定は12月1日(同2日)に失効し、合意できなければロックアウト入りが予想される。争点は球団側が求めるサラリーキャップとサラリーフロア。ロブ・マンフレッド・コミッショナーはオーナー陣の結束を強調し、選手会のブルース・マイヤー暫定事務局長は「サラリーキャップは悪質な制度だ」と拒絶した。

 確かにドジャースの数字は衝撃的だ。5日現在の1ドル=157円で換算すると、期限後のぜいたく税算定上の年俸総額は4億3150万ドル(約677億円)、税額は1億8750万ドル(約294億円)に達する見込み。課税基準の2億4400万ドル(約383億円)を大幅に超え、3連覇を狙う王者の姿は上限導入派にとって格好の〝証拠物件〟となる。

 一方で、大金が勝利を保証するわけではない。メッツは算定年俸3億6340万ドル(約571億円)、税額1億1950万ドル(約188億円)でともにメジャー2位ながら、ナ・リーグで下から2番目に低迷。年俸総額が下位に位置する10球団も、残り約50試合の段階でプレーオフ争いに加わっていた。これは上限なしでも競争均衡は成立するとの選手会側の主張を補強する。

 ドジャースは昨季、ぜいたく税と収益分配金を合わせて3億4440万ドル(約541億円)を拠出したとされる。巨額支出を許す代わりに、資金を下位球団へ流す仕組みはすでに存在する。しかも今季引き継ぐスクバルの年俸は3200万ドル(約50億円)のうち960万ドル(約15億円)で、同投手は今季終了後にFAとなる。

 結局、この補強はオーナー側には「格差」の象徴、選手側には「自由競争と再分配が機能する証左」として利用される。交渉を動かさないのは、影響が小さいからではない。双方の主張を硬化させるだけで、妥協へ向かわせる材料にはならないからだ。