虹色の帽子を巡る〝違和感〟が、ついにワシントンにまで波紋を投げかけた。米全国紙「USA TODAY」は19日(日本時間20日)、米司法省がジャイアンツの「プライドナイト」で起きた抗議行動を受け、メジャーリーグ機構(MLB)に対する公民権侵害の可能性について調査を開始したと報じた。焦点は、LGBTQコミュニティー支援を掲げる球団イベントと、宗教上の信念を理由に異議を示した選手の扱いだ。

 発端は12日(同13日)、ジャイアンツが本拠地オラクル・パークで行ったカブス戦前の球団イベント「プライドナイト」だった。ジャイアンツ側はあらかじめ球団公式のイベント告知で「6月12日金曜日、シカゴ・カブスとの週末3連戦の初戦で、プライドとLGBTQIA+コミュニティーを祝う」とメッセージを出していた。

 そうした中、ランデン・ループ投手(27)、JT・ブルーベイカー投手(32)、ライアン・ウォーカー投手(30)の3人は、虹色の球団ロゴが入った特別仕様の帽子に聖書の一節を書き込んだ。記されたのは旧約聖書「創世記」9章12~16節。別のサム・ヘントゲス投手(29)は、プライド仕様の帽子を着用しなかった。

 MLBはこの行為について、ユニホームの無断改変に当たるとして4投手に警告した。罰金などの処分が科されたわけではない。だが、司法省はこの対応を問題視した。ハーミート・ディロン司法次官補はロブ・マンフレッド・コミッショナー宛ての書簡で、3選手が「MLBのプライド擁護の正統的な姿勢に反対を表明した」と指摘。宗教上の異議を唱える選手の権利を不当に侵害してはならないとの見解を示した。

 同次官補は、雇用主は従業員の宗教的権利の行使に合理的に対応するため、制服規定を変更しなければならないとも主張。MLBを雇用機会均等委員会(EEOC)に付託するとした。球団内のユニホーム騒動はMLBの枠内に収まらず、宗教的自由とLGBTQ支援を巡る全米規模の論争へと拡大しつつある。

 政治も敏感に反応した。J・D・バンス副大統領は16日(同17日)、米老舗誌「スポーツ・イラストレイテッド」のSNS投稿に返信する形で「トランプ(大統領)が勝った。もうこんなことをする必要はない」と投稿。保守層からはMLB批判が上がる一方、サンフランシスコ側ではプライドナイトの趣旨を傷つけたとの反発も根強い。

 ジャイアンツは声明で、プライドナイトとLGBTQコミュニティーを支援できることを誇りに思うとしつつ、チーム行事に関する個人の選択も尊重すると説明。その一方で、選手たちの行動が多くの人々に「痛みと怒り」を与えたとも認めた。

 MLBは今、社会的メッセージ、宗教的自由、そしてリーグ規定の境界線を問われている。