眠れる「燕キラー」を起こした代償は、あまりにも大きかった。首位・ヤクルトは19日の巨人戦(いわき)に0―2で敗戦。2位・阪神とのゲーム差は1に縮まり、3位・巨人にも1・5ゲーム差まで接近を許した。しかも相手は7連勝。首位を走る側としては、痛恨の黒星となった。

 立ち上がりから主導権を渡した。今季初登板初先発の高橋奎二投手(29)は初回、先頭の平山に2号ソロを被弾。さらに二死から三塁打を許し、大城の中前適時打で2点目を奪われた。それでも2回以降は走者を出しながら粘り、5回6安打2失点。試合は壊さなかったが、打線の援護は最後までなかった。

 最大の分岐点は3回だった。2点を追う一死満塁の絶好機をつくったが、後続が無得点。ここで1本が出ていれば空気は一変していた。だが、相手先発の戸郷翔征投手(26)に踏みとどまられ、逆に試合の流れを固められた。

 より痛いのは〝復活の合図〟を与えてしまったことだ。今季の戸郷はこの試合前まで2試合で0勝1敗、防御率7・20。4日(神宮)の前回対戦では5回6安打5失点と攻略し、黒星をつけていた。ところがこの日は7回5安打無失点。フォークを軸に要所を締められ、今季初勝利を許した。

 そもそも戸郷は近年、ヤクルト戦に強い。2023年は3試合で1勝0敗、防御率4・43、24年は4試合で3勝1敗、防御率2・05、25年は6試合で4勝0敗、防御率2・43。直近3年間で対ヤクルトは実に計8勝1敗、防御率2・80と、チームと自身の状態に波があっても燕打線には安定して勝ってきた。今季首位を快走するヤクルトであっても、天敵の記憶を完全には消せなかった。

 試合後の池山隆寛監督(60)は「フォークもすごい走っていた。フォークの見極めはできていたんだけど、途中から球種をスライダーに変えられて、真っすぐが余計に生きましたし…」と戸郷の投球を認めた上で脱帽。そして「向こうはやっぱり連勝中。3回のチャンスをつぶしたのが痛かった」とも振り返った。

 昨季最下位から一転、首位に立つヤクルトにとって、今の位置は守るだけでなく突き放すためのものでもある。苦しんでいたはずの戸郷を目覚めさせ、追う巨人の連勝に勢いまで与えてアシストしてしまった。この日の1敗は、数字以上の重みを含んでいる。