エースの〝再起動ボタン〟は、いわきのマウンドにあった。巨人の戸郷翔征投手(26)が19日のヤクルト戦(ヨークいわきスタジアム)に先発し、7回115球を投げて5安打無失点。チームを2―0の完封勝利に導き、3度目の先発で今季初勝利をつかんだ。昨年10月1日の中日戦(東京ドーム)以来、230日ぶりの白星。巨人は2年ぶりの7連勝でセ3位ながら首位ヤクルトに1・5ゲーム差へ迫った。
援護は初回に入った。平山の1号ソロ、大城の適時打で2点を先制。そのリードを背にした戸郷は、初回に先頭の長岡に右前打を許しながらも後続を断った。
最大のヤマ場は3回だった。一死から武岡と長岡に連打を浴び、サンタナには四球。一死満塁のピンチを背負ったが、内山を空振り三振、増田を中飛に仕留めた。グラブをたたき、雄たけびを上げた姿には、長く勝ち星から遠ざかった右腕の感情がにじんだ。
阿部慎之助監督(47)は「チームにとっても本人にとっても大きな1勝になりました」と復活星をたたえた。今季の戸郷は開幕二軍スタート。二軍での練習後には「いろいろともがきながらも、苦しんでいる」と自らに言い聞かせるように漏らすこともあった。それでも苦しい表情の奥で、目だけは曇らなかった。
支えになったのは、先輩の背中だった。菅野智之投手(36=ロッキーズ)も巨人時代、不調に苦しんだ2023年から2024年にかけ、久保康生巡回投手コーチ(68)と投球フォームの改良に取り組んだ。かつてはくみ取れなかった先輩の苦悩を、戸郷は自らの不振を通じて痛いほど理解したという。
「今活躍している菅野さんでも、この〝苦しい恐怖〟っていうのをすごく感じていただろうし。苦しみながらも走り続けていれば、何かいいものはどこかで見つかるはず。気持ちが落ちていたらダメだと思う」
円熟の先輩が歩いた復活への道筋は、迷えるエースにとって希望の光だった。230日ぶりの白星は、単なる1勝ではない。巨人の7連勝を伸ばし、優勝争いへ再加速させるための戸郷自身の再出発でもあった。












