ロボット審判時代を、ヤンキースはもう「研究対象」ではなく「勝ち筋」として扱っているようだ。米有力紙「ニューヨーク・タイムズ」傘下のスポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」は、ABS(自動ボール・ストライク判定システム)に対するヤンキースの見方を詳報。そこにあったのは新ルールへの戸惑いではなく、1球を奪い返して1勝を拾いにいくという、いかにも勝者の発想だった。

 象徴的なのが、タナー・スワンソンバッテリーコーチ(43)の言葉だ。選手には「ハイステークスのポーカー」のように考えろと説き、行ける場面では「超アグレッシブ」に攻めるよう求めている。アーロン・ブーン監督(53)も、選手たちの判断力を信頼した上で「積極的に攻めていきたい」という方針を明かした。つまりヤンキースはABSを単なる誤審修正装置ではなく、主導権を奪うための戦術として位置づけている。

 しかも、これは思いつきではない。球団は2021年にアリゾナ・フォールリーグ(秋季教育リーグ)でABSが導入されて以降、その影響を分析し、審判ごとの傾向やストライクゾーンの〝死角〟まで蓄積。今季開幕前の春季キャンプでは判定を覆した回数が全体トップの24回に達し、シーズン序盤もチャレンジ成功13回、成功率81・3%とリーグ上位を維持している。「受ける技術」と「見抜く技術」を一体化させようとする設計は、いかにもヤンキースらしい。

 要するにヤンキースは「審判に合わせる野球」から一歩進み「判定を取りに行く野球」に踏み込んだということだ。現時点でチームはア・リーグ東地区首位の5勝1敗。2日(日本時間3日)は試合がなく、次戦は3日(同4日)の本拠地マーリンズ戦となるが、こうした細部の積み重ねこそが長丁場では効いてくる。

 ABSはまだ新しい制度だが、ヤンキースはすでにその先を見ている。1球の判定すら、名門は放っておかない。