侍ジャパンが連覇を懸けて挑んだ戦いは、米マイアミの地で非情な結末を迎えた。14日(日本時間15日)にローンデポ・パークで行われたWBC準々決勝で強豪ベネズエラと対戦したものの、5―8で逆転負け。日本にとっては、大会史上初となるベスト8止まりという恥辱の結果に泣いた。日本球界全体が重苦しい空気に包まれる中、今回の敗戦を「未来への号砲」として鳴り響かせたのが、阪神から選出された若き主軸コンビだった。

 佐藤輝明内野手(27)と森下翔太外野手(25)の2人は、世界最高峰の舞台でその実力をいかんなく発揮した。メジャーで3度の2桁勝利を記録している剛腕左腕、レンジャー・スアレス投手(30=レッドソックス)を相手に佐藤は右翼線を破る同点の適時二塁打を放ち、森下も一時勝ち越しとなる3ランを叩き込んだ。日本が痛恨の敗退を喫した一方で若虎2人が計4打点を挙げ、世界にその名をとどろかせた事実は見逃せない。

3回、同点適時打を放った佐藤輝明
3回、同点適時打を放った佐藤輝明

 規格外の長打力と身体能力が国際舞台でも通用することを証明した佐藤は「悔しいだけで終わらせたくない」とさらなる高みを見据えている。驚異的な勝負強さと対応力を見せた森下も「メジャーを肌で感じ、体験できたことは自分の中の基準になった」と充実ぶりを隠そうとしなかった。メジャーの第一線で戦うスアレスを打ち砕いた経験は、2人の心に確かな火をともしたはずだ。

 この光景を、阪神の藤川球児監督(45)はどう見たか。指揮官自身、現役時代に2006年第1回WBCの米国戦でアレックス・ロドリゲス(当時ヤンキース)にサヨナラ打を浴びるという、どん底の経験を味わっている。しかし、その悔しさを糧に09年第2回WBCでの世界一連覇に貢献し、後に自身のメジャー移籍を実現させた経緯がある。「必ずいい人生の一部になる」という虎将の言葉には、自らの歩みを重ねた深い示唆が込められているのだろう。

 米国の地で世界との差を痛感し、原動力に変えてきた先人は多い。今回の敗戦は日本にとって痛手ではあるが、佐藤と森下の2人にとってはメジャーへの距離を劇的に縮めるための通過点となった。敗北の静寂の中で見えた景色を胸に、虎の主軸たちの視線はすでに次のステージに向かい始めているのかもしれない。