【昭和~平成スター列伝】前々回は復活した新日本プロレスのIWGPヘビー級王座(現王者は辻陽太)の最年長記録(天龍源一郎の49歳10か月)更新を狙うミスター・永田裕志が、全日本プロレスの3冠ヘビー級王座最年長記録(54歳9か月)を更新した試合について触れた。
もうひとつのメジャー団体・ノアのGHCヘビー級王座で記録を保持するのが、2023年2月21日東京ドームで引退した武藤敬司(58歳1か月)だ。60歳で引退した武藤にとっては、史上最高齢3大メジャー王座獲得という最後の大記録だった。偉業が達成されたのは21年2月12日、日本武道館。くしくもノア10年ぶりの武道館大会で、王者は潮崎豪だった。
「熟練の試合運びが光った。武藤は一気にギアを上げて閃光魔術弾、ドラゴンスクリューでたたみかける。2018年3月に両ヒザの人工関節置換術を受けてから封印している月面水爆はコーナーに上がった途中で断念したが、かつてのライバル三沢光晴さん(故人)の必殺技だったエメラルドフロウジョンを繰り出すと、これがノアファンの琴線に触れた。最後は潮崎の豪腕ラリアート、月面水爆を耐え抜き、奥の手・フランケンシュタイナーで3カウントを奪った。これまで新日本のIWGP王座を4度、全日本の3冠王座を3度(うち2回は化身のグレート・ムタ)巻いた武藤が最後に残されたGHC王座を戴冠。佐々木健介、高山善廣に続く史上3人目のグランドスラムを達成した。58歳1か月での戴冠は杉浦貴が持つ47歳10か月を大幅に更新。原動力はマット界に流れる“50歳定年”の流れに対する反骨心だ。『最近は50歳過ぎたら引退させられる流れがあるじゃん。でもそんなのクソくらえだ。レスラーの価値を決めるのは年齢じゃない』と叫んだ」(抜粋)
その言葉通りに21年からノアに移籍した武藤は、金字塔を打ち立てた後に60歳まで現役を貫いた。現在、ノアは大きな世代交代の波が押し寄せており、GHC王座はOZAWAが25年1月1日にデビュー2年4か月での史上最速戴冠を記録。さらには新日本を離脱した内藤哲也とBUSHIらのLTJが参戦してGHCタッグ王座を奪取するなど、リング上は様変わりして全盛期の勢いを取り戻した感が強い。11日の後楽園大会は立ち見席も完売。WWE帰りのGHC王者Yoshiki Inamuraが杉浦を撃破してV4に成功した。
だが生え抜きのベテラン勢もこのまま黙ってはいないだろう。前記録保持者の杉浦は現在「ゴッドファーザー」と呼ばれ、55歳にして30代と変わらぬスタミナと体力と(以下略)を誇り、王座戦でも互角以上の勝負を展開した。旗揚げ当時からのファンは、新しい風景と同時に、武藤のようにベテラン勢が逆襲する痛快な「ドラマ」も期待しているに違いない。 (敬称略)













