【取材の裏側 現場ノート】WBCに向けた侍ジャパン事前合宿は連日、大勢のファンとメディアを集める大盛況。それでも個人的には、ある選手の不在を思うとどうしても感傷的な気分になってしまう。宮崎の地で伝え聞いた阪神・石井大智投手(28)のアキレス腱断裂の報はあまりにもショッキングだった。
秋田高専→四国独立IL高知→ドラフト8位入団という叩き上げの経歴は、野球エリートぞろいの代表内では際立って異質。「そんな彼にこそWBCにはぜひ出場してほしかった。本当に気の毒で…」と右腕に畏敬の念を抱く侍ジャパンのスタッフも声を詰まらせる。
旧知のアスリート専門のドクターによると「アキレス腱という箇所はどれだけ念入りにケアをしていても、ほんのわずかな〝体の動きの狂い〟で痛めてしまう可能性がある」という。ストイックに自己管理を徹底してきた石井が体のメンテナンスを怠るはずなどない。だからこそ、彼の不運がただ恨めしい。
「自分たちはいつ野球ができなくなってもおかしくない」。真剣な表情で米球界へのポスティング移籍を訴えていた昨冬の言葉が脳裏をよぎる。改めて石井のようなトップアスリートたちが、どれだけの身体的負荷の中で日々プレーしているのかを痛感した。
連続無失点記録の更新に沸いた昨夏以降、試合後の右腕は過去に見たことがないほど言葉数が少なくなり、消耗した態度を隠せなくなっていた。継続記録について語ることを嫌がる選手も多いため、私個人としては「精神的に摩耗しているのだな」と解釈していた。
だが、シーズン終了後の石井に話を聞くと「メンタル的な問題ではなかったんです。あの頃はずっとコンディションが悪かったので…。フィジカルの方が問題でした」とのこと。常に圧倒的なパフォーマンスを見せつけていただけに錯覚してしまったが、ギリギリの体調の中でベンチの期待に応え続けていた。
断言するが、石井大智は必ず甲子園のマウンドに帰ってくる。1年以上続くであろうリハビリの過程の中で肩やヒジをリフレッシュし、知性に磨きをかけ、より完璧な姿で戻ってくる。「50戦連続無失点」というNPBレコードは今なお途切れていない。彼の物語もまだ終わっていない。(遊軍担当・雨宮弘昌)












