巨人で二軍監督などを歴任した桑田真澄氏(57)が昨季限りで電撃退団し、直接指導がかなわなかった新人選手から「知見に触れてみたかった」との声が上がっている。

 桑田氏は日米球界を渡り歩き、引退後は評論家、指導者として活動する一方、早稲田大学大学院修士課程を首席で修了するなど、学術的な探究心を発揮。理論と現場の双方から多角的に野球を学び続ける姿勢は球界でも珍しく、若い選手たちは桑田氏からもたらされる新しい発想や視点に刺激を受けてきた。

 ドラフト2位・田和廉投手(22=早大)も桑田氏の指導に関心を寄せる一人で、同じ母校の早大でデータ分析のゼミナールに所属。分析ソフト「Stata(ステータ)」を使って自分の投球データを解析し「変化球が曲がる決定要因」をテーマに卒業論文をまとめたインテリ右腕だ。

 田和の研究によると、他の投手の落ち球系と比較した際に得意のシンカーに自身の特徴がはっきり出たという。「リリースの位置が外に出たら曲がらなくなってしまう投手もいれば、自分は逆に外から投げた方が曲がったりした」。

2009年に早大大学院に入学した桑田真澄氏
2009年に早大大学院に入学した桑田真澄氏

 研究対象は大学4年間のリーグ戦で投げた全投球で、データ収集には4年秋の11月までかかった。その間、先行研究のレビューも行い、思わぬ出会いがあったという。

「一番興味を持ったのが、桑田さんの論文でした」。田和は参考文献として桑田氏が共同執筆した論文を読み「リリースポイントがバラついた方が、むしろ制球力が高い可能性があるという考察が面白かったです。足の上げ方やマウンドの状態が違っても、狙った位置に投げられるのは修正能力があるって解釈です」と興味深そうに語った。

「ジャイアンツであの論文を読んだのは僕だけかも(笑い)。そういう意味では会って話してみたかったです」。運命のいたずらか、桑田氏とはちょうど入れ違いになってしまったが「考える野球」に通じる〝桑田イズム〟は若手の中に芽吹いている。