阪神・石井大智投手(28)が12日に兵庫・西宮市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、1億1800万円増となる、年俸2億円でサイン。会見で「とてもいい評価をしていただいた」と語った右腕は球団との話し合いの場で、ポスティングシステムを利用した米球界挑戦の意向を伝えたと明かした。チーム内では既に、複数の投打主力選手が同制度を適用したMLB移籍を要望中。チーム空洞化の危機を虎はどう乗り越えるのか――。
秋田高専―四国IL高知を経て2020年ドラフトで阪神に8位入団した叩き上げ右腕の最大の原動力は、飽くなき向上心と探求心。「独立リーグの頃から一年一年成長し、常に上のレベルを目指してきた。今後の将来を考えた時に、アメリカの野球を経験したいという気持ちを伝えさせていただきました」と表情を引き締めて語った。
プロ5年目の今季は53試合に救援登板し、1勝0敗9セーブ36ホールド。防御率に至っては0・17と驚異的な数字をマークし、チームの2年ぶりリーグ制覇に大きく貢献した。だが、現行の移籍ルールで石井が海外FA権を取得するためには、最短でもあと4シーズン以上はNPB球団の一軍でフル稼働する必要がある。その時点で石井の年齢は、すでに30代半ば。「僕らはいつ投げられなくなってもおかしくないので」という右腕の言葉には重みがある。
球団史に前例がないほど投打の主力が充実している猛虎は、現時点だけでも先発陣の柱・才木と、不動の4番打者・佐藤輝らがポスティングシステムの適用を球団に要望中。来季でプロ4年目となる森下も早期米球界移籍の意向を公言しているだけに、編成部門を取り仕切る竹内球団副本部長も「石井はチームにとって代えのきかない選手。選手にそういう思いがあるというのは今に始まった話ではありませんが、時代がそうなっている以上…難しいところですよね。メジャーへどんどんいい選手が行ってしまうのは…」と言葉を濁さざるを得ない。
石井は最短なら来オフの米球界移籍も視野に入れているとのことだが、球団側もそう簡単に容認するわけにはいかない。才木、佐藤輝に加え、中継ぎ陣の中核を担ってきた石井までチームを離れれば、虎の黄金時代も一気に終わりを迎える恐れすらある。過去にはチームへの貢献度や実質稼働年数を評価し、藤浪(22年オフ)、青柳(24年オフ)らのポスティング適用を認めてきた阪神も、今後はより難しい判断を迫られることになる。
年齢的に最も脂の乗ったタイミングで海を渡りたい選手サイドと、時間と金をかけて育成した選手たちを簡単に放出するわけにはいかないNPB球団。日米間の移籍ルールが未成熟なままである以上、両者の隔たりが埋まることはない。(金額は推定)












