【赤ペン!】今年もまた戦力外通告の季節がやってきた。そこで思い出されるのが元巨人投手・橋本清氏だ。
長嶋茂雄さんが監督に復帰した1993年、クローザーの石毛博史につなぐセットアッパーに抜てき。「勝利の方程式」継投で94年のリーグ優勝と日本一に貢献した。
しかし、2年連続52試合に投げた影響で95年以降は振るわず右ヒジ手術。2000年にクビになり、テレビの“戦力外通告”ドキュメントに出演した。すると、長嶋さん自ら橋本氏に電話をかけ、「あの番組見たぞ」と改めて丁重にねぎらいの言葉をかけたという。
長嶋さんが橋本氏をかわいがっていたのは確か。長嶋さんが「調子はどうだ?」と聞くと、橋本氏は先輩・中畑清氏に倣っていつも「絶好調です!」と返答。すると長嶋さんは「何? 絶好調?」と楽しそうにほほ笑むのだ。時々、背後から橋本の頭を小突き、「お前ホント面白い顔してるなあ」とからかうこともあった。
そんな様子を見ていた当時のチームメートは、「ハシはいいな、長嶋さんにかまってもらえて」とうらやましがった。「僕もなるべく長嶋さんの目に留まるようにしてたからね」と橋本氏は言った。
そんな橋本氏に引き換え、第1次監督時代の元投手・新浦壽夫氏は「俺は逆だった」そうだ。「新浦、いくぞ」と言われるのが怖くてミスターの背後に回り、視界に入らないようにしたという。
当時の新浦氏は先発と救援にフル回転。登板予定がない日、ベンチに座っていたら、長嶋さんが突然「ピッチャー新浦」と審判に告げたことも一度や二度ではなかった。78年は63試合に投げ、15勝15セーブ(7敗)、防御率2・81でセーブ王と最優秀防御率のタイトルを獲得。その新浦氏に、長嶋さんは“禁煙指令”ならぬ“喫煙指令”を出したことがある。
新浦氏が76年の元旦からたばこをやめたら、82キロの体重が90キロ近くに急増。その姿に長嶋さんは「その太りようは何だ!」と詰め寄り、こう怒鳴りつけたそうだ。
「本当はたばこ吸いたいんだろ! ケツの穴からヤニが出るまで吸え!」
長嶋監督が解任されて2年後、新浦氏も戦力外通告寸前だった82年。長嶋さんは新浦氏に「韓国プロ野球へ行け」と勧めた。韓国で復調した新浦氏は、87年に大洋(現DeNA)で見事カムバックを果たしている。
昔は新浦氏も橋本氏も長嶋監督の酷使につぶされたと言われた。が、その経験は今、間違いなく彼らの財産になっている。













