【赤ペン!】広島、巨人で活躍した元投手、川口和久氏(66)が古巣の球場で元気な姿を見せている。

 故郷・鳥取で農作業をする傍ら、6月には巨人OBとして東京ドームのレジェンズシートでナマ解説。と思ったら、今月3日、今度は広島OBとしてマツダスタジアムの始球式を務めていた。

 今も両球団のイベントに声がかかるのは、広島の“巨人キラー”だった川口氏を、長嶋茂雄監督が巨人に移籍させたからこそだろう。その誘い方がミスターらしかった。

 川口氏がFA宣言した1994年オフ、川口氏の広島の家に自ら電話。

「長嶋です。川口くん、FAしたんだって? 僕と話をしようよ。じゃ、あした、待ってるよ」

 それだけ言うと電話をガチャン。川口氏がぼうぜんとしていると、すぐさま側近の人物からまた電話があり、明朝の飛行機のチケットは用意した、昼にホテルオークラへ来てほしい、と告げられた。

 その翌日、高級感漂う部屋で一緒にチャーハンを食べながら、長嶋さんは熱心に川口氏を口説いた。

「川口くんは巨人から何勝してるんだっけ?」

「33勝くらいです」

「ほほお、去年は?」

「4勝ですね」

「そうか。じゃあ、来年のウチは4敗ぶん減るんだな。待ってるからね」

 こうして巨人入りした川口氏は96年10月6日の中日戦(ナゴヤ球場)で胴上げ投手となる。11・5ゲーム差をひっくり返して逆転優勝を決め、見事「メークドラマ」の大トリを務めたのだ。

 その試合前の朝、長嶋さんはリリーフ投手全員に大号令をかけていた。

「きょう決めるぞ。先発が危なくなったら、最初は木田(優夫)だ。次はゲンちゃん(河野博文)でいくよ。その次は水野(雄仁)。最後を締めるのは、川口、おまえだ」。この宣言通りの継投で勝ち切ったのだった。

 長嶋さんと川口氏の間には、こんな逸話もある。99年のシーズン終盤、広島・江藤智がFA宣言し、横浜(現DeNA)移籍が有力と報道された時のこと。ある日の試合前、長嶋さんは川口氏にこう相談したという。

「江藤、FAして横浜に行くんだって? ウチにしろよ、ウチに。川口、今すぐ江藤の携帯に電話してそう言ってくれ」

 川口氏は苦笑しながら「監督、今(夕方)5時前ですよ」と返答。広島も別の球場でナイターの試合があり、その1時間前だから江藤が電話に出られる時間帯ではない。

 ただ、これも長嶋さんの熱意の表れ。その後、江藤も巨人に移籍した。