【赤ペン!】「まだやってるんですか? ゾンビだね」

新人松井秀喜(左)を熱血指導する長嶋茂雄さん(93年)
新人松井秀喜(左)を熱血指導する長嶋茂雄さん(93年)

 去る16日、東京ドームで行われた長嶋茂雄終身名誉監督追悼試合でセレモニアルピッチを務めた松井秀喜氏に会ったら、そんなジョークを飛ばしてきた。

 私は東京ドームが開業した1988年から野球の取材を始めて、今年で37年目。とうとうゴジラにゾンビ呼ばわりされるトシになったわけだ。

 その松井氏と長嶋さんとの師弟関係は広く知られているところ。特に田園調布の自宅、遠征先の宿舎の部屋に松井氏を呼びつけ、延々と素振りをやらせた“特訓”は、今や伝説となっている。

 ただ、長嶋さんが引退した74年生まれの松井氏はミスターの現役時代を知らない。だからか、新人だった93年は長嶋監督についてこんな恐れ気のない発言をしていた。

「正直、テレビで見てるのとあんまり変わんないですね。結構、笑えるし」

 そんな松井氏を、長嶋監督は高校時代の定位置三塁からセンターにコンバート。大リーグの伝説的名選手になぞらえて、「日本のジョー・ディマジオになってほしい」と壮大な理想を語った。しかし、松井氏は不満だったらしい。5年目のキャンプ中、私たちの前でこうぶちまけている。

「俺には外野手のセンスがない。ずっとサードをやらせてほしいって土井(正三・総合守備コーチ)さんに言ってるんだよ」

 二軍監督だった高田繁氏に、冗談ながら「俺にファームで4番サードをやらせてよ」と“直訴”していたこともある。

 打撃コーチの篠塚和典氏は「松井がサードをやりたがってますけど」と長嶋監督に水を向けてみた。するとミスターは「ううん!」と一声うなり、黙り込んだそうである。

 しかし、松井氏は長嶋監督の家に飾られたディマジオの写真を見た時、ミスターがこの大打者に心底から憧れていたことを知ったという。松井を「日本のディマジオ」にすることは、監督としての悲願だったのだろう。

 長嶋さんが他界した翌日、松井氏は「監督と生前に交わした約束を果たしたい」と明かしている。今も巨人の試合は気にしているかと私が聞いたら「もちろんチェックしてますよ」と松井氏はキッパリと答えた。

「今年はかなり厳しい状況であるのは間違いないですけど、ペナントを取れなくても、去年の逆バージョン(下克上)を期待しています。たとえ優勝できなくてもね」

 長嶋さんとの約束が巨人の監督なのかは分からない。が、松井氏の巨人愛は不変のようだ。